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第4回1000字小説バトル
Entry43

お話の読み方

作者 : 高島朝也
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 ウニを抱いていた拍子に針で体を貫通させてしまった私は、以来、
ここの病院にいる。わりと軽めの怪我だったので、たいした手術を
うけるでもなく、この大部屋にたたき込まれた。怪我のために物を
書くのに不自由しているということはない。

 ふと手を止めてまわりを見渡した。
 同室には私をいれて五人ほどがいる。変わり者の同室者たちを相
手にするのは常識人の私としては気を使ってしまうが、今となって
は大切な友人たちだ。
 お金持ちの家に突撃だとかいうワイドショーを食い入るようにチ
ョーさんは見ていた。チャンネルをNHK教育にしてやると白目を
むいて寝てしまった。
 どこの穴からでも何でも自由に出し入れできるコージは、今もど
こで手に入れたんだかわからない白い粉を吸い込み、体の中に巡ら
せていた。多分三分経ったら口から出てくるに違いない。心の中で
「ミナカタくん」と呼んでやる。
 カトーさんは夜な夜な男のところに忍び込み、寝ているまわりに
卵を蒔いて夢精するのを待っているという。今は入念にその下準備
をしているのだろうが、毛布の下のその動きはよくみえないので何
とも言えない。
 みんな常識はずれで困ったヤツらだが、やはり大切な友人たちだ。
 そうそう。いつもまわりにあるものをポケットの中にいれて物陰
に隠れるケンを忘れていたが、たまに私が書いた小説を気に入って
持っていく癖があるので、いなくなっては困るやっぱり大切な友人
だが、取り返した小説はすぐにゴミ箱に捨てることにしている。

 そんな部屋に先生がやってきて診察を始めるとき、診てもらうの
も面倒だ、という友人たちをなだめるのも私の役割だ。お見舞いに
来たその家族たちに愛嬌を振りまいてやっているのも私一人だけだ。
たまに運び込まれる六人目の同室の患者さんを魔の手から守ってや
るのもまたこの私だ。全く常識人というものはつらい。
 ユリと名乗るコージの兄、いや、元兄がやってきた。チョーさん
やカトーさんがあげていたお菓子の賞味期限は切れていた。ケンが
持ってきたのは、どこで拾ってきたのだろう、真っ白なミミズのし
っぽだった。それらのプレゼントを喜んで受け取りながら「これが
真実の愛なのね」と目を輝かせていた彼女の愛読書は私が贈った
「情熱の季節」というレディースコミックらしい。

 退院の季節が近づいた。別れがもの悲しくなる季節だが、来月に
は元に戻っている自分が吠えている姿が目に浮かび、少し力が抜け
た。






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