第4回1000字小説バトル
Entry8
例えば、こういうメールを打っていた時にそれは起こる。 「……ある時期、磁場の歪みについて考えていました。ここは元々 磁場のゆるいところなんだから、華原朋美なんか歌っちゃ駄目だぜ、 という物語。そう、磁場コップのことです。バミューダとか、船や 飛行機がふっと消えてしまう、あの辺を連想していました。案の定、 華原朋美もふっと消えてしまいましたけどね、あははは。もしかし たら、そのお仕事、Mさんのおっしゃる通り、上原多香子が引き継 いだのかもしれません。謎の腰痛が多発しているというMさんちの お風呂場、ちょっと磁場がゆるいのではありませんか? 連休中の 磁場コップは、雪の日のJAF並みに忙しいので、気を付けてくだ さいね」 「お風呂場」のことである。「おふろば」の変換一発目で「オフ驢 馬」になってしまうこの機械、果たして文明の利器なのか? 5年 も付き合っていて、なんだ、そのざまは。 しかし、「オフ驢馬」とはいったい何だ。 ははん。私は背広を着た驢馬を思い浮かべる。記者懇談会で、 「ここからはちょっとオフ驢馬で頼むよ」と野中官房長官が言うと、 背広を着た驢馬は手帳をぱたんと閉じ、肩を落として部屋を出てい く。そして、改憲論議についての野中氏の本音は驢馬社会に伝わら ないのだ。ああ、なんてことだよ、驢馬社会。 「学習機能がついているはずだ」と私は電気屋の店員に詰め寄った。 「ちゃんと、学習してるじゃありませんか」と若くて美しい店員は 言った。「お客様の先を読んで変換しているのです。賢い子なんで す」 まったく、店員は若さと美しさに物を言わせて自信満々なのであ る。 「じゃあ何かい? 僕が驢馬社会の被差別意識について、常々考え ているとでも言うのか?」 ふざけるのもいい加減にしろ、と私は鼻息荒く手帳を閉じた。 「ひひん」と威嚇すると、店員は「ふふん」と笑った。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。