インディーズバトルマガジン QBOOKS

第5回1000字小説バトル
Entry11

1999

作者 : カエデヤオ
Mail :
Website : http://www.dance.ne.jp/~natsumi/smile.html
文字数 :
 明日は地球最後の日。

 街はやけに静かだった。気が遠くなるような昔から変わらない夜
空の下で、いつもよりずっと静かだった。
 私の両親は、家族で一緒に最後を迎えよう、迎えたい、と言った。
姉と妹はそれに賛成し、私は家を出た。私の最後に必要なのは、家
族ではなかった。家族よりももっと、大切な人がいる。
 
「電気消すぞ」
「ちょっと待って」
狭い部屋。1組の布団。私はパジャマ姿の彼に近づいて、彼の右手
と自分の左手をタオルでつなぐ。
「何、コレ」 
「最後まで一緒って。約束した」
「血止まるってコレ。アホ。……寝るし」
薄っぺらい布団に、二人手をつないでもぐり込む。やっぱり高鳴る
胸を抑えつけ、きつく手を握りながら、ぎゅっと目を閉じた。

 初めは私も家族と最後を迎えようって思ってた。でも、フと彼と
付き合い出した時のことを思い出したから。
 彼には家族がいない。でも彼はずっと元気で、1人が楽でいいっ
て言ってて、私もそれを信じてた。だけど、二人でお酒を飲んだ時、
彼は私に言ったのだ。帰るな、って。1人にすんな、って。酔っ払
ってたけど、それが本当だと思った。この人は、本当は寂しいんだ
って。それがわかったその時から、彼が大切で仕方ない。そばにい
よう、そばにいたい、と深く思うようになった。
 誰にも渡したくない。ずっとつなぎとめておきたい。私は逃げな
いし、彼も逃がさない。

 明けてみれば、いつもと同じ朝だった。何も違わない。ただ、静
かに時間が過ぎるだけ。私と彼は、いつもと同じ食事をして、いつ
もと変わらないくだらない会話をした。
 この人がいれば、それでいいのに。他の皆が死んでも、耐えられ
るのに。何もいらないのに。

 そして、その時はやってくる。プレステをしていた彼が、突然口
を開いた。
「なんか…眠…」
「私も。昨日けっこう早く寝たのに…」
 ……。
 二人顔を見合わせた。気付いていた。
 心臓はウソのように落ち着いて、意識が遠のいて行く。これが、
最後か。

「…あの世行っても、またえっちしよな」
情けない声が聞こえて。
「ちゃんと私探してよ」
と、答えた。

 ありがとう。さようなら。






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