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第5回1000字小説バトル
Entry12

月の明かりに照らされて

作者 : TAKUTO
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 あの日俺は酔っていた。酒のせいにするつもりはないが、普段な
らあんな事はしなかった。俺は、名も知らぬ女と遊んだ。
 女は激しく、爪をたて噛み付いた。俺は怒ってすぐ別れたが、首
筋には傷が残った。翌日は身体がだるく、会社を休んだ。
 原因はそれ位しか思い当たらない。だが、今となっては……。


「大神さん。ちょっといいかしら」
 数日後、美人で評判の秘書課の美香が声をかけてきた。
「ん? なーに?」
「今夜貴方を食べたいの」
「えっ?」
 俺は6時になると仕事も放り出し、待ち合わせのホテルへ直行し
た。誰にもなびかないので有名な美香だ。俺は張りきった。

「もう離さないわ」
 とろんとした目の彼女は、汗で濡れた小振りの乳房と一緒に、俺
の胸に抱きついてきた。彼女も満足したようだ。髪の間から覗く首
には白い傷跡が見えた。

 それから俺達は、彼女のマンションで秘密裏に同棲を始めた。


 明日は満月という時、彼女は一緒にいたがったが、俺はあいにく
出張となり、地方へと出かけていった。


 美香に悪いとは思ったが、抑えきれない性欲は出張先で女を買っ
ていた。俺は少し性格が変わったようだ。

 連込みで欲求を満たしていると、窓から射し込んだ淡い月の光が、
俺の身体にかかった。
 俺は急に息苦しくなり、体中が痙攣した。こんな所で死ぬのかと
さえ思えた。
 そのうちに身体中に毛が生え、口は尖り歯は鋭くなり耳も立って
きて、身長(いや体長というべきか)さえ変わり、四つ足で歩きま
わった。変身したのだ。

 俺は中型の犬になっていた。開放感からか、暫くは人間に戻りた
いとも思わなかったが、理性が勝った。だが、いざ戻ろうとしても
10分はかかった。

 俺は部屋の隅で気絶していた女をそのままに、会社のホテルに戻
った。
(やっぱりあれが原因だ。伝染病の一種だろうか。病院なんかへ行
ったら研究材料だ…。くそっ。こうなったら美香も仲間にしてしま
おう)


「私もなのよ。だから付き合いだしたんじゃない」
 翌日、出張帰りの俺に噛み付かれそうになった美香は、ベッドで
首の古傷を見せた。
「次の満月は、動物として愛し合いましょうよ」
 思いがけない言葉に喜び、俺達は満月までいつものように暮らし
た。


 月は満ちて、俺達二人は月明かりを浴びた。

 変身した彼女の舌が、俺の喉に触れた。俺は美香の始めの言葉を、
恐怖の中でゆっくり思い出していた。

『貴方を食べたいの』

 グガルルゥ。彼女は虎に変わっていた。






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