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第5回1000字小説バトル
Entry15

分別収集ノススメ

作者 : ヒロト
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 マリンブルーのゴミ収集車が、奈落町三丁目の閑静な住宅街を慌
ただしく通り抜けてゆく。運転手の若い男は自慢のロン毛を初夏の
風になびかせながら、ふと腕時計に目をやり、舌打ちをした。
「まいったなー。もう一時回っちゃってるよー」
「さっきのポイントで時間食っちまったもんな。腹減ったか?」
 中年の男が助手席でねぎらうように微笑みかける。ポイントとは
行政が指定したゴミ集積所のことだ。いわゆるゴミ置き場である。
「腹は減ってないスけどねー。でもさっきのポイント、今日は可燃
ゴミの日だっつってんのに、何で資源ゴミなんか出してんスかねー?
マジ頭きますよ」
「そうだな。あれじゃあ役場の立会いなしには動かせないし、警察
だって呼ばなくちゃならん。面倒事はごめんだよ……さ、着いたぞ。
仕事仕事」
 本日最後のポイントに到着し、マリンブルーの収集車は前のめり
に停車した。ふたりは勢いよく車から飛び降り、路上の隅に積み上
げられたゴミ袋の山を手際よく切り崩しては後部ハッチへ投げ込ん
でゆく。普段より蝿が多くてうっとうしいが、作業は順調そのもの
だ。このぶんなら三時には清掃工場へ帰って熱いコーヒーが飲める
だろう。

 ところが。最後に残ったひときわ大きな麻袋がやけに重くてびく
ともしない。若い男と中年の男は互いに顔を見合わせた。どうやら
同じことを考えていたらしい。
「とにかく中身をあらためましょうよ」
「そうだな……」
 中年の男が袋を縛るヒモに手をかけた。嫌な予感がますます募る。
そして中のゴミが姿を現した時、若い男は深い溜息をもらした。
「……やっぱり。ああもう、またかよ。資源ゴミは第一、第三金曜
日だっつってんだろー?」
「こうなっちまったら仕方ないな。役場と警察に連絡しよう」
「無駄っスよ。どうせ分別収集に非協力的な住民の仕業に決まって
ますって」
「多分な。ま、規則は規則さ」
 ふたりは麻袋から現れた顔面蒼白な老人の首を見つめて、公務員
の因果を噛みしめる。干乾びた口に詰められた白い綿が、老人から
言葉をむしり取っていた。

 斎場がダイオキシンの排出基準オーバーで取り潰されてからとい
うもの、奈落町では、遺体は資源ゴミに分類され、指定された日以
外にそのゴミを捨てると、捨てたものは死体遺棄罪に問われてしま
う可能性があるのだ。
 犯罪者になりたくなければ、故人をゴミと言い張るしかない。






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