第5回1000字小説バトル
Entry17
いつの時代にも神というのはいるものだ。ある時代のある地方で は神は「火」だった。 獣の多い地域であり、その獣から身を守るために火を絶やさなか った。いつしかそれは「神」と崇められるようになった。 火を絶やさないように薪をくべ、雨風で火が消えないように社を 建てた。 火は神であり、守るべきものだった。 ある火のことだ、その火が社に燃え移り、社は火に包まれてしま った。村人達は社に集まる。その中には長老の姿もあった。 社を包んだ火は隣家に引火し始めた。 それを見た一人の男が飛び出した。近くの川で濡らした衣服を振 り回し、火を消そうと家に走った。 「止めろ。火を消してはならん」 長老の声に村人達が男を羽交い締めにした。男は暴れながら燃え 続ける家に向かおうとしている。 「家には病気の息子がいるんだ」 男は泣き出し、長老を見た。しかし、長老は首を振った。 「火は神様じゃ、消してはならん」 神なる火は一つの家を燃やし尽くすと、その隣の家にも襲いかか ってきた。 「このままでは村は終りだ」 叫ぶ男に長老は、 「村が滅ぶかは神が決めることなのだ」 と呟いた。 村人達はただ呆然と村が燃えるのを見守りつづけた。 炎は勢いを失うことなく村を包んでいった。村のすべての家を燃 やし終えると神は消えていった。 はたして守るべきものとはいったい何なのだろうか…。
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