第5回1000字小説バトル
Entry20
「申し訳なかったー申し訳ない」と明るい声で謝るのは僕の彼女。 ある日噂を耳にした。僕の彼女が僕以外の男と楽しそうにデートし ていたというのである。気になるけどそんなこと聞けない...。もし 聞いたとしても、「申し訳なかったー申し訳ない」と明るい声で言 われるだろう。そんな彼女をどうせ許しちゃうし、このまま放って おくことにしよう...。きけるほど自信もないし...。 最近2人でデートしても、何かいつもと違うことに気がついた。 彼女の笑顔は少なくなったし、口グセである「申し訳なかったー申 し訳ない」を言わなくなった。変だ。でも謝ることがなくなってき たのはいいことだし、深く考えないことにしよう...。 それにしても最近笑わない。それにつれ、僕も笑わなくなった。 ふたりとももう終わりかな。よし、こうなったら死ぬしかない。僕 は自殺した。死んだらどうなるか知りたかったけど、けっこう予想 通りの展開で、死んでも僕の“意志”は存在した。自分で自分が見 えないし、自由に動けるわけではないけれど、ある空間の中に僕の 意志だけがぽっかり浮いている。非常に興味深く、はじめての体験 に少しドキドキしている(どこがドキドキしているのやら)。 今日が僕の葬式。今となってはしょうがないけど、やっぱり悲し い。僕の両親や友達が泣いているのを見て、「やめときゃよかった かな...」と思ってしまった。 葬式には彼女も来ていた。棺桶にねている青白い僕に、彼女は涙 をためながら小さな声でこう言った。 「申し訳なかったー申し訳ない」 そこで途切れた。次に”眼(みえた)”っていうか、景色を感じ た時、彼女は僕以外の男にむかって、「ごめんなさい」と謝ってい た。明るい声ではなかった。 僕は最低だ。死をもって愛を確認しようとした自分がくずに思え てしかたがなかった。そして僕は消えた。
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