第5回1000字小説バトル
Entry22
「一体、何を考えてるんだ。君は」 黒崎課長の叱責が部屋中に響いた。 “またやってる” そりゃあ、確かに薗部君も悪いよ。 これで、3日目だものね。月曜日が15分、火曜日と水曜日が20 分。段々ひどくなるもの。 でも、課長も薗部君の様子を見れば、判りそうなものだよ。 かなり、顔色悪いし、ああやって立ってるのも辛そうだもの。 だから、昨日言ったんだ。 「電話すれば良いのに」 彼、黙ってた。 黙って、なんか考えてた。きっと、今日は大丈夫だろうと思ってた ら、やっぱりだめだった。 何で電話しないんだろう。 後で、もう一度話してみようかな。 「何だこれは。」 また、課長の大声。 ちらっと見ると、薗部君白封筒を課長に差し出してる。 「退職願です」 とても落ち着いた、普段の薗部君とはまったく違う態度で堂々と、 封筒を差し出している。 「だから、これは何のつもりかと聞いているんだ」 課長の声に、皆仕事してる振りをしながら耳をそばだてているのが 良くわかる。 次に、薗部君が発する言葉を皆が課長以上に好奇心を持って待って いるんだ。 「ですから、やめさせて頂こうと思いまして」 多分、課長より皆のほうが驚いているに違いない。だって、あんな 薗部君、今まで誰も見たことがないもの。 そりゃあ、突然やめるって言い出せば、誰だってびっくりするよ。 でも、今の薗部君なんだかとっても、かっこいい。 ただ、立っている姿がちょっとふらついてる様に見えるのが心配だ。 だって、絶対どこか具合が悪いよ。あの様子は。 「ちゃんと、説明してくれなきゃ、判らんよ。こんなものだけじゃ」 そりゃ、そうだね。 「それが全てです。他には何も言うことはありません」 おお、言ってくれるじゃない。 「よし、判った。君がそう言う態度なら、私にも考えがある」 へえ、課長でも考えることがあるんだ。 「結構です。どちらにしても、やめさせていただきますので」 それだけ言うと、園部君、ペコッと頭を下げて、出ていってしまった。 課長は、呆気に取られている。 「なんなんだ、あいつは」 誰にともなしに大きな声でつぶやく。もちろん誰も答えない。 多分、言ってやったらすっきりするんだろうな。きっと。 でも、薗部君みたいに大人にはなれないだろうな。 感情的になっちゃうんだろうな。 言ってやりたいね。 「あんたのせいだよ」って。 ああ、今日も始まったばかりだし、今週もまだ後3日もあるのか。 何でこう、一日が長いんだろう。 頭の中で声が響く。 「今度は誰かな」
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