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第5回1000字小説バトル
Entry30

卒論の後で

作者 : 小沢 純
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 電話のベルが鳴った。
1、2、3、4、5回鳴って、切れた。あの人からだ。
すぐにもう一度かかってくるわ、原始的だけど私たちの合図。
ほら、掛かってきた。受話器を取る。「みゃ〜あ」とあいさつする。
猫の鳴きまねが私たちの こんにちは と さようならのご挨拶。
「 寄っていい ? 」 あの人が言う。
「 うん、待ってる 」 私は、答える。
15分位して、扉にノック。あの人だ。
チェーンを外して、扉を開ける。 
私の目の前に 真紅の薔薇が差し出された。
「 卒論、終った 」 私がうなずくと あのひとは、続ける。
「 きょう 抱きたい」 私は、自分の頬が赤くなるのを感じた。
ちいさく、うなずく。
「 車、取ってくるから、今晩泊まれるようにしておいて 」
あの人は、花束を私に手渡し、空いた両の腕で私の腰を強く抱い
た。痛いほどに。

 2時間位して、私たちはホテルにいた。あの人は、高揚した気持
ちを鎮めようと、お酒を開けた。グラスにつがれた冷酒を、私は口
に含んだ。男にこびる娼婦の気分が私を支配した。酒を含んだまま、
あの人に口づけする。あの人は、私の口から少しぬるくなった冷酒
と私の唾液を吸った。私は吸われながら、あの人の大きな手が私の
うなじを引き寄せさらに、強く胸に抱きしめられるのを自分の感覚
としていた。頭の中が空っぽになってゆく時間。私が いきもの 
に戻る時間。

 行為は、激しかった。後ろも貫かれた。私の神経はしびれていた。
それでも、二人とも少しずつ眠った。朝陽がすき間からこぼれてい
る。先にシャワーから戻った私をあの人は、再び求めてくれた。何
度目だろう ?擦り切れちゃわないかな? 心の何処かで思いなが
ら、ほてる体をあの人に開く。

「 素敵だったよ。 ありがと 」あの人が言う。
「 みゃあ〜 。 お花、ありがとう 」照れてる、私が答える。

「 卒論、通るといいね 」
 あの人は、最高の笑顔で私の心を 突き刺した。
おどけたあの人は、「 みゃ〜! 」 と、ひと鳴き。

 卒論の後は、卒業、そして就職、私たちの関係も 節目を迎える
ことになる。
来年、「 みゃ〜 」とあいさつする関係でいられるのだろうか






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