第5回1000字小説バトル
Entry32
ふと、おとこは手を止めた。 立ち上がり、窓辺へ近づいて、分厚い老眼鏡の奥の眼を細める。 遠くを見つめているようだった。 木枯らしが吹く中、色白の少年が三人のおとこたちに犯されてい るのを眺めた。 おとこはブラインドを下ろし、反対側の窓へと歩いた。 窓の外に極彩色の花畑を眺めた。眼を凝らして、人数を確認する。 無造作に設置された絞首台へ並ぶひとびとの顔は、この上なく晴 れやかだった。 ブラインドを下ろし、おとこは作業の仕上げに取りかかった。 おとこは、とてもいい仕事をした。 暖炉に燃える焔に照らされたおとこの瞳は、八〇を超えた老人の ようにも見てとれたし、精通を迎える前の悪戯好きな少年のようで もあった。 ゆらめく焔に、すべてを委ねているかのように。 おとこは、ゆっくりと立ち上がって、自身の手で完成させた代物 を見下ろした。素材から工法まで、一切の手抜きなく組まれたそれ は、芸術作品と呼ばれるものと通じる何かがあるように感じられた。 作業台の上へ置かれた煙草に手をつけることもせずに、おとこはそ の中へ腰を沈めた。躯を横たえて、内側からぴったりと蓋をした。 突然、暖炉にゆれる焔が大きく燃え上がり、床に積もる木屑に燃 え移った。 おとこは眼を瞑り、胸いっぱいに吸い込んで、大きく吐き出した。 そして永遠に、そのままだった。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。