第5回1000字小説バトル
Entry34
八月十七日 学校を終え、アパートに帰ってくれば、十五、六の全裸の見知らぬ 少女がヒマワリの種を食い散らしていた。自分はそれがあのハムス ターだとすぐに気付いた。確かに、昨日から様子がおかしいとは思 っていたが…。 自分が何よりも恐れたのは世間である。こんな少女を家の中に匿っ ていたら、いつ誰に目撃され、拉致の罪で捕まってしまうかわから ない。この少女の身元など、いくら調べたって絶対に分かりやしな いだろうが、だからといって勝手に自宅に連れ込んで良いという法 があるものか。狼少年を匿っただと?おかしな言い訳だ。今時そん な事があるはずない。この少年がハムスターだったって?確か言葉 も分からない、字も読めない。人間の少女にしては、少しおかしい 所も有る。しかし、それこそ本当に馬鹿な話だ。 ハムスターに噛み付かれた。彼女は食事を終えると、突然自分に食 ってかかってきて、腕を力一杯噛み付いてきたのだ。自分は何度も 彼女を蹴りつけたが、しぶとく腕を離さない。ふと、近くに置いて あった包丁を手にするが、彼女はますます強く噛む。自分は痛みに 耐えられなくなり、いよいよ彼女の右肩を斬りつけた。すると彼女 はギャアと悲鳴を上げて、どくどくと血が疼く肩を、指が食い込む ぐらいに押さえ、魚のように床をのた打ち回る。いよいよ、僕は正 気を失いつつあったが、膨らむ心拍を抑えて、救急箱から包帯を取 り出した。彼女は体に触れられると、こちらをぎっと睨みつけ、暴 れて抵抗するが、自分は力ずくで腕を押さえて、彼女の右肩に包帯 を目一杯きつく巻いておいた。しばらくすると、彼女は痛みにも慣 れてきたのか、大分大人しくなり、ヒックヒックと泣きじゃくって 床に伏せこんでいるのだった。 冗談じゃない…。この先どうするんだ。彼女の肩からは血が止まる 事無く溢れ出している。心なしか、彼女も様子も滅入ってきている に見えた。このままではいけない…。
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