インディーズバトルマガジン QBOOKS

第5回1000字小説バトル
Entry37

独裁者

作者 : 岩本 光生
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Website : http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/4244/
文字数 :
 ボクん家のドアは、特別なんだ。
 ドアを開ける時に、自分がなりたいものを思い浮かべると、ほら
不思議、何にだってなれちゃうんだから。
 ボクん家のパパが長い間研究して、ようやく発明したのさ。
 それで昨日さっそく試してみたんだ。『どくさいしゃ』ってね。
「まわりのみんなが、ボクの言うことを何でも聞いてくれたらいい
のに」ってボクが言うと、それを聞いていた友達が「それじゃ、ま
るで独裁者じゃないか」って教えてくれたから。

 そしたらボクは、チョビひげをはやした、ちっこいおじさんにな
ってたんだ。
 でも、あんまり面白くなかったなぁ。だって、何もさせてもらえ
なかったから。
 目をギラギラさせて、嬉しそうにしているのは、ナントカ将軍っ
て人とか、ナントカ研究所の所長さんとか、周りの人たちばっかり
でさ。かんじんのボクは、へんてこな朝礼で壇の上でふんぞり返っ
たり、怖そうな顔した軍人さんの難しい報告を聞いてたりするだけ
だったから。
『どくさいしゃ』って、もっと楽しいもんだと思ってたのに……。
 ボクの通っている学校の校長先生も、毎日きっと退屈してるんだ
ろうな。

 だから今日はもう一度試してみたのさ、『本物のどくさいしゃ』
ってね。
 そしたら、ボクは大きな台の上に立って、目の前にズラッと列ん
だ人たちの質問責めにあってたんだ。でもね、これが結構面白いん
だよ。だって、みんなボクの言うことをありがたそうに聞いては、
その通りにするんだもの。まるで学校の先生になった気分だ。
 あっ、そうか。『どくさいしゃ』って学校の先生の事だったんだ。
 でも、すぐに気がついたんだ。『どくさいしゃ』ってのも大変な
仕事なんだなって。目の前の人の列は、どれだけたっても一向に減
る気配はなくて、かえって増え続けているように見えるんだ。いっ
たい、いつになったら終わるんだろう。もう疲れちゃったよ。
(ボクは『どくさいしゃ』って仕事には向いてないや)
 ぼんやり、そう思っていると、次の順番の人がこう聞いたんだ。

「右のほっぺたを叩かれたんです。どうしましょうか?」ってね。
 もういい加減面倒だったから、適当に答えたのさ。
「じゃあ『左のほっぺたもどうぞ』って言えば」
 そしたらさあ……。
 おいおい、ホントにやらないでよ。冗談なんだからさぁ。






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