第5回1000字小説バトル
Entry5
「スペードのキング」 「んなッ、もう勝負かよ。 そうくるなら……どうだ!クラブのエース!」 「ほほぉ、それは俺を挑発してるのかな? これでフィニッシュね」 俺がゆっくり差し出したカード。 ジョーカー。 それを見て、相棒はがっくり肩を落とした。 「はっはっは、まいど〜」 俺は素早くケースに入れられた掛け金を懐に納めた。 「むうッ、もう一勝負!」 「おいおい、もう止めとけ。 お前も資金がなくなっちゃ困るだろ」 「ああ、そうだな……」 資金、というのは彼女たちにオゴる金のこと。 「あっすいません。 カリビアンひとつ下さい」 俺は通りかかったウェイトレスにコーヒーを頼む。 「でもさ、暇つぶしにトランプをはじめてどのくらいたったんだ?」 「さぁな……」 壁にかかる時計の長針は、約束の時間の一回り半ほど先を指していた。 「もう来ないんじゃねぇの? これだけ待たせるってことは」 「そんなわけないぜ。 お前も聞いただろ? 彼女がオッケーを言うのを」 「例えば、他のいい男と別のデートの約束したとか……」 「まさか」 「有りうるぞ。 知り合いに聞いた話によるとだな、 朝、占いの方角が悪いってだけで約束を平気で破るとか。 しかも連絡なし」 「俺達に会うためにそれだけ気を使うってことはいいことだろ? きっとあのさりげないナチュラルメイクに手間取ってるんだよ」 「いやいや。 彼女たちみたいなブランドレディを誘うこと自体、ムリなのさ。 俺達みたいな下賎な一般人は約束のことなんか忘れて、 こうしてトランプに興じるのが一番!」 「お前最初はやたら乗り気だったのによ……ははぁ そんな事言って、さては俺から負け分を取り戻したいだけだなぁ?」 「やっぱバレる?」 言って相棒は笑う。 まったく……負けず嫌いな相棒。 「おまたせしました。 それではごゆっくり」 ウェイトレスは追加のコーヒーとレシートを運んできた。 「さぁて、飲み物もそろったことだし」 「わかった、わかった。 次は何で勝負すりゃいいんだ?」
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