第5回1000字小説バトル
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同じクラスで、お向かいに住んでいる佐和ちゃんは、それはそれ は綺麗で明るくて性格の良い子で、「いつかは芸能人になるんじゃ ないか」って皆言ってたけど、この前交通事故に遭っちゃって、足 がもう二度と動かないんだって。 でも、皆、その事知らないんだ。ただの骨折だと思ってる。 知ってるのは、あたしと隣のクラスの三上くんだけ。 だって、佐和ちゃんをはねたのって、三上くんのお兄さんなんだ もん。 三上くんのお兄さんって、いわゆる「ゾク」って言うヤツで、夜 になると毎日大勢で国道を一生懸命バイクで走ってるような人。 そして、信号を渡っていた塾帰りの佐和ちゃんにドン!… 佐和ちゃんの足、その時死んじゃった…らしい。 それから毎日、三上くんの家の人が佐和ちゃんの家に来てたよう だった。 「あたしの足を返して!」 「歩きたいよ!走りたいよ…」 そんな叫び声が、向かいに住んでいるあたしまで聞こえるから、 すぐ判っちゃう。 あたしはまるで日課のように、部屋の窓から佐和ちゃん家を覗く ようになった。しばらくは三上くんの家の人が総出で通いつめてい たけど、三上くんのお兄さんが、別の事件で警察に捕まったことと、 この「佐和ちゃん事件」が「お金」で解決したことで、「オトナ」 の足は途絶えちゃったみたい。 今日もあたしは窓からお向かいを見る。 そろそろ来る頃だ。佐和ちゃんが玄関に出て、待っている。 キッ・・・微かに自転車を止めるブレーキ音がした。 「聖陽!」 佐和ちゃんが嬉しそうな声で三上くんの名前を呼ぶ。三上くんは サッカーの練習着が良く似合うんだ。そして無言で車椅子をゆっく り押して、玄関の段差から佐和ちゃんの乗っている車椅子を降ろし たら、そっと佐和ちゃんにひざ掛けを掛ける。佐和ちゃんは二言三 言話し、三上くんが黙って頷く。何を話しているのかなんて判らな い。覗いているだけのあたしにはとても聞こえないよ。遠くて。 あの方向だと、今日は公園の方かな。二人の表情は逆光に遮られ て、あたしからは良く見えない。 「開放してあげなよ、佐和ちゃん…」 あたしの胸は、窓を見る度にいつもちくちくと痛くなり、目から は大粒の涙がぽたぽたと窓枠に零れ落ちる。
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