第5回1000字小説バトル
Entry56
電話してきたって出ないからね。 いつもそう思うけど上手く行かないんだけれども今回はその電話 が架かって来なかった。彼はちょっと心配になってしまうから、自 分から電話しようかと考える。どうしようかなあ。駄目だめそんな んじゃ、大きな氷だって小さなヒビから砕けちゃう事もあるんだよ、 知ってる? だけど決めたんだよ、だから出ないよ。 架かってこないから自分で決めたのは守れているけど、何かちょ っと寂しい。 お手紙しようかな。抽き出しの中に銀色のペン。インキの色もき らきらだよ。エレキを使っているんでないよ。そのまんまでもきら きらなんだよ。とっておきのインキの蓋もぴかぴか。部屋に便箋が 見付からないからヘーゼル色した本の表紙を取り上げる。何て認め よう。お元気ですか。 最近は空を飛ぶ夢ばかり見ています。 そんな言葉だけで恥ずかしくなって彼はそれを丸めてゴミ箱に捨 てた。でもずっと空を飛ぶ自分の姿を描きながら架からない電話を 待つヒビを送っている。絶対に出ないんだからね。
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