第5回1000字小説バトル
Entry8
とても遠いところにふしぎな森があるんだ。一年中みどりで、一 年中花が咲いている。そしていつもきれいな七色の虹が、森にかか っていた。それはとても大きく森のどこからでも見ることができる。 夜中でも見ることができるんだ。 タヌ吉は、学校のトラ山先生とクラスのみんなで虹へ遠足に来て いた。みんなで虹を見ながらお昼を食べていたんだ。その時トラ山 先生がこんなことを言っていた。 「先生も子供のころ、ちょうど今のみんなと同じぐらいのころは虹 に登るのが大好きだった。学校が終わると家へはまっすぐ帰らない で、そのまま虹へ登って遠くを眺めていたんだ。友達にメダカのヨ シオってのがいてな、そいつと日が暮れるまでしゃべっていたり、 虹をすべり台にして遊んでいた。あっ、あの頃、この森には虹が三 つもあったんだぞ」 「えっ、三つもあったの」 キツネのゴン太がすぐに口をはさんだ。 「そう。今、みんなの目の前にある虹と、この川の上流と下流に一 つずつで三つあったんだ。それも微妙に色の濃さが違っていて、遠 くから見るとあまり違いは分からなかったけれど、近くから見ると はっきりと違うのが分かった」 そう言うと、トラ山先生はお弁当の黄色い卵焼きを口に入れた。 そしてタヌ吉も気になったことをウサギのウサ太郎がすぐに聞いた。 「どうして三つあったのが、今は一つなの」 トラ山先生は卵焼きを飲み込むと箸を置いてゆっくりと言った。 「いつもヤギ川先生とも話をしているのだけれど、それがどうして なのか今でも分からないんだ。ただ、昔あった三つの虹のうち、一 番色が濃かったのがこの虹で、他の二つが薄かったんだ。そして消 えてしまった。その友達のヨシオもこの間言っていたけれど、この 虹も昔に比べて色が薄くなってきているって。ちょっと気になって いるんだよね」 また、ゴン太があわてて聞いた。 「この虹もなくなっちゃうの」 「いずれは無くなってしまうんだろうね」 タヌ吉はトラ山先生がそう言うと予想はできたけれど、それでも 言ってみた。 「先生、なんとかならないの」 「どうして消えてしまうのかが分からないからね」
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