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第5回1000字小説バトル
Entry9

相棒

作者 : よしよし
Mail :
Website : http://www2s.biglobe.ne.jp/~yoshi_s/yoshi.htm
文字数 :
 終電の終ったホーム。常夜灯の明かりも届かない片隅で僕は身を
潜めていた。埃に埋もれ、ネズミに齧られながらも僕は心安らいで
いた。何しろ、ここには棒を持った人間も、石を投げるものもいな
い。優しい言葉はないが、罵声もない。
(野良犬ニハオ似合イサ)
 頭の上でクモの巣が揺れている。外は雨、こんな日は愛されたい
欲求でいっぱいになる。今はこんなだが、これでも昔は人に飼われ
ていたこともある。

 あれは梅雨入りの少し前、当時はまだ希少価値が高かったから一
匹25万なんて値段が付いたけど、それでも買手はいくらでもいた。
 珍しさから「研究所でバラされた」なんて話しもあたけど、僕を
買ってくれたのは普通の家で、僕はその家の小さなお嬢さんの誕生
日プレゼントだった。ラッキー!  なんて思ったのも束の間。お嬢さ
んは僕のこと直ぐに飽きて、もっと優秀で可愛い犬を欲しがった。
僕を売り出したメーカーも、安くて高機能な新型を次々と発売して
いたからね。

 ガシャガシャガシャ。

 僕の回想を破って駅の構内に異音が響く。仲間だ!  駅やビルには
コンセントが必ずあるから仲間も集まり易い。隠れなきゃ! 何し
ろ僕は一番の旧式だから頭が悪いし動きも鈍い。歩くのだってスゴ
ク遅いから、追いかけられたら逃げられない。

 ガシャガシャガシャ。

 しかし、目の前に現れたのは僕とおんなじ型だった。一安心。

 ガシャガシャ。バウバウ。

 僕たちは直ぐに仲良くなって、始発前の駅をあとにした。

 外へ出ると、野性化したファー○ーが屯っていた。
「Yからは空を飛べるんだよ」と相棒。
 そのファー○ーに紛れて、朱鷺が群れている。
「あん時はみんな騙されたからね」と相棒。
「今でもあれが僕たちと同じだなんて思えないよ」
 僕のような「いかにも」って感じじゃなくて、動きも優雅だし、
見た目も本物の朱鷺と区別がつかない。(と言っても本物はもうい
ないけど)
「朱鷺ブーム」に乗って、海賊版だかレプリカだかが沢山でまわっ
ていた。それが逃げたり、捨てられたりしたとしても凄い数だ。
「あいつらは繁殖が目的だったから、自己増殖機能が有るんだ」と
相棒。
(なるほどね)

 その鳥たちに餌を投げてたヒューマノイドタイプが僕らに気づき、
手招きをする。最近流行りの「バーチャル子育て」の産物だ。

 ガシャガシャガシャ。

 相棒が走り出す。僕も負けじと後を追う。
 驚いた鳥たちは夜明けの空へと一斉に飛び立った。






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