第6回1000字小説バトル
Entry2
大阪で二番目に長いとされる商店街のある町で生まれ育ちました。 暗くて、心持ち湿気を孕んでいる空気、市場や玩具屋や、豆腐屋、 うどん屋、妙にチグハグな具合で新しいスーパーマーケットが並び、 私は雨の降る日以外はその商店街を通る事もなくなりました。 雨の日はアーケードがあるので便利なのです。濡れずにすむ....。 遥か上の方で雨がパツパツと屋根を打ち付ける音だけが響いていて、 それが私のやる気を萎えさせますが、雨の中の商店街は何処か懐か しさを伴う黴臭さが漂っています。そう、ここは生まれ育った所な のです。 「あこその天ぷら屋の主人はなぁ、どうせ天ぷら屋を継がせる息子 にちょっとでも楽しい青春を送らせて遣りたい言うて、息子を大学 に出しよったんや。そんで今、天ぷら屋に立ってる息子、大学出て すぐに天ぷら揚げ始めたんやで。死んだ主人もそりゃ、喜んでるや ろうなぁ」 でも、彼はいつも渋い顔をしていた。卑屈そうな、不満が爆発しそ うな顔と、この世に二つとない元気な太陽のような笑顔。 雨が降っても降らなくても、商店街は暗い。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。