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第6回1000字小説バトル
Entry22

宝くじ

作者 : 夜啼き鳥
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 周蔵は東京へ向かう新幹線のグリーン車で、流れる景色を見つめ
ていた。一つ息をつき、背広の胸を右手で押さえる。内ポケットに
宝くじが入っているのだ。
 周蔵は成功者だ。東京の下町で生まれ、中学を卒業した後、理髪
の職に就いた。腕がいいだけでなく、運気を掴むことにも長けてい
たらしく、それが親類の家のある関西で華開いた。新しく開く店に
失敗はなく、周蔵は客の髪を切っている暇がなくなった。妻も趣味
もなく、根っからの職人の周蔵に、店に立つなというのは酷であっ
た。整髪料の匂いや、鋏が髪を切る感触に離れがたいものを感じて
いた。会社にあてがわれた部屋にぽつねんと座っていると、思い出
すのは幼い日の初恋の相手、美津子のことであった。小学校で一つ
上だった美津子はなにくれとなく周蔵の面倒をみてくれた。お互い
貧しい者同士、引き合うものがあったのか、中学に進む頃から淡い
恋として進んでいった。
 別れから二十年、調査会社に依頼して、すぐに所在は知れた。夫
と死別し、貧窮しているらしいということも知ってしまった。昔懐
かしい校庭で会うことにした。
 校舎は様変わりしていたが、校庭は土のままだった。やけに小さ
い地べたに白線が斜めに走っていた。美津子は校舎側に立っていた。
「ご無沙汰しております。ご立派になられて」
 杓子定規な挨拶が周蔵には不満だった。既に知っている美津子の
近況を、殊勝気に周蔵は聞いた。
「ここに宝くじがある。当たっているかもしれないし、外れている
かもしれない。当たっていたら美っちゃんと半分こにしたい」
 美津子はしばらくして静かに首を振った。どうしてだよ、美っち
ゃん、あの頃二人、どんな物でも分け合ったじゃないか。今度は僕
の番だよ。美津子がかすかに微笑んだように周蔵には見えた。
 美津子が帰ると言う。周蔵はそれを引き止めることができなかっ
た。
 一人校庭の真ん中で、周蔵は夕陽に晒されていた。宝くじは壱千
万の当たりくじを壱千百万で買い取ったものだった。
 周蔵は不器用であった。宝くじを足元に埋めた。暖かい土が手に
心地よかった。






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