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第6回1000字小説バトル
Entry30

僕は正義のヒーローだ

作者 : よしよし
Mail :
Website : http://www2s.biglobe.ne.jp/~yoshi_s/
文字数 : 993
「絨毯みたいに」と言う表現そのままに黄色い菜の花が緩やかな丘
の斜面を埋めつくしている。空は青く、風が若葉の香りを運んでく
る。
「おべんと食べましょ〜♪ みんなで食べましょ〜♪ 」
丘の中腹では近隣の幼稚園児たちが仲良くお弁当を広げていた。
「せんせー、つとむ君お花とってるよー」
いち早くお弁当をたいらげ、さっそく走り回っているのは腕白坊主
の「つとむ君」。
彼の手には引き抜かれた菜の花がブラブラと揺れている。
「こら! 」
先生の声に園児たちがワァーと歓声を上げる。つとむ君は怒られる
前にサッサと逃げ出した。
「待ちなさい」
しばらく続いた追い駆けっこも、先生がつとむくんの襟首を掴んで
終った。
「駄目じゃない、お花を採っちゃ」
先生は跪いて、つとむ君の目を覗き込む。
「なんで? 」
つとむ君はキョトンとして聞く。
「お花も生きてるんだから可哀相でしょ」
先生がため息を吐く。つとむ君は下を向いたきり黙り込んでしまっ
た。何気なくその視線を追って先生がギョッとなる。そこは小さな
スミレが咲いていたのだが、その茎と葉は先生の足の下敷きになっ
ていたのだ。


「おはようございまーす」
「おはよう」
腕白坊主のつとむ君も今年は6年生。ご近所の人にもチャント挨拶
できる、真面目で礼儀正しい優等生と評判だ。
 そのつとむ君が今日は重大な決意を固めて学校に向かっている。
彼に決意をさせたのは昨日の理科の時間だった。

 その日、教室はいつもより騒がしかった。何故なら今日の理科の
実験は蛙の解剖なのだ。
「先生、蛙が可哀相だよ! 」
つとむ君が持ち前の正義感を発揮した。
「大丈夫、この蛙は解剖される為に生まれてきたんです」
先生は蛙を掴み上げ、みんなを見渡した。
「この蛙もみんなの為に解剖されるのを喜んでいます」
そう言って先生は蛙のお腹にナイフをザクリと刺した。

 菜の花は採ちゃ駄目。でも雑草は採るんだ。
 牛や豚を食べるけど、クジラは可哀相。

 先生は人も花も同じように生きているから大切にしなさいと言っ
た。でも大切にされない花もある。それが何故なのか昨日わかった。
 みんなが大事にしているのもは、大事にしなきゃいけない。でも
嫌われているもの必要ないものは違う。それがみんなの為になるな
ら躊躇う必要なんかない。

 乱暴者のあいつ。あいつのせいで僕のクラスは目茶苦茶なんだ。
僕はポケットの中のカッターを握り締める。きっとみんなも喜んで
くれるはずなんだ。






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