第6回1000字小説バトル
Entry33
「この猫が喋れたら何て言うかなあ」 「そりゃあ決まってる。ご飯の時間だ。トイレが汚い。もっと静か に話してくれ、オレは眠いんだ。なんてさ」 「いや、アタシたちの話に割って入ってくるかもよ。アンタの言う ことはいつも理屈ばっかなんだよ、それじゃコイツが可哀相だ。な んてね」 「お前はもう少し女ってものを研究したほうがいいな、それじゃ彼 女に逃げられるぜ。ってか」 「お前の秘密はぜんぶ握ってるぜ、気をつけな。ってさ」 「なんだよ、そりゃあ。」 「猫が言うことなんだからアタシは知らない」 「なんかへんだなあ」 「へんじゃないよ、猫はぜんぶ見てるんだから。たとえばアタシが 居なかったあのときだって、何をしてたかわかったもんじゃない」 「誰のことだよ。猫がかよ」 「バッカじゃないの。何をしてたかわかんない誰かの行動を、ぜん ぶ見てたのが猫ってことよ」 「やめようぜ、こんな話」 「そうやっていつも逃げようとするんだから、卑怯だよね」 「なんだよ。猫の話じゃなかったのかよ」 「もう話は変わってるのよ、そんなこともわかんないわけ」 「またか・・・」 猫は呟き、いずれ怒鳴りあいか掴み合いに至る口論を避け、ひっそ りと避難場所にしている押し入れのダンボール箱へと向かった。飼 い主である二人には、気づかれもせず気にもとめられなかった。
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