第6回1000字小説バトル
Entry39
重力と呼ばれる刑罰により地に縛り付けられ、はいつくばり、こ の俺が思うことはいつも白き輝きのもとに映し出されるきらめきの 支配者。なぜあなたはこの俺に無能というロゼリオを背負わせるの か。弱さと、愚かさと、脆さと、拙さと。 この身を、白き影のごとく取り巻く世の真実。黴により蝕まれ、 錆び付いた釘を打ち込まれ、無能という重たい鎖につながれ、一寸 たりとも伸ばすことが許されない手で少しでもそれに触れようとす る。届かないことはわかっている、いや、わからされている。 少し一人にしてくれないか、俺の側でいつもニヤついているもう 一人の俺よ。そう、貴様だ。 俺は深く、永遠とも思われるほど長く、瞼を閉じ、心のうちに映 し出される古い人形を見つめる。そう、これが俺なんだ。たとえわ ずかな振動でさえ崩れ去ってしまうほどに、時という冷酷な処刑者 により蝕まれた一体の人形。俺はその人形を、あたかも母親がその 胸に赤子を抱くかのように大切に抱えあげ、無明の闇の中にいる番 人どもにむかってこう叫ぶ。 「笑いたければ笑うがいいさ、どうせこれも本物じゃないんだろう」 俺は走った。息が切れ、手足の力は抜け、血が体の中で固まり。 死体さながらに俺は走った。しかしすぐに孤独という番犬が追いつ いてきて俺の喉元に食らいつき、俺はその場に倒れこみ、そして泣 いた。 俺の涙は闇を穿ち、そこからは黒い血に染まった、一本の白い柱 が伸びてきた。 「さあこれを昇るがいい。そうすればその先には貴様の望んでいた 輝きの果実があるであろう」 俺は一心不乱に昇った。手の爪は剥げ落ち、足の指は折れ、胸の 皮はむけ。全身が血の洗礼を受け、ようやく上にたどり着いた時に は、その果実は既に輝きを失い、醜く朽ち果てていた。 しかし俺はためらうことなくそれを口一杯にほおばる。それが俺 のとり得た果実であるからだ。すると全身の傷からたちまちのうち に緑色の黴が湧き出し、俺の体を腐らせる。骨は砂のように脆く崩 れ去り、体はその自らの重みに耐え切れずにその場に崩れ落ち、瞳 は水分を失いしわだらけになり潰れる。それでも俺は生きていた。 そして、生きている以上は会わねばならなかった、そう、あの方に である。 きらめきの支配者よ、一体あなたはどこまで残酷なのか。この私 に、希望という毒までも盛ろうとは。
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