第6回1000字小説バトル
Entry40
宝くじが当った。一億円。嬉しい。うれしい。すご〜く、嬉しい。 …嬉しい。 この金を元手にやってみたい事があった。ひょっとしたらもっと 多くなるかも知れない。勿論無くなってしまうかも知れないが、く じが外れたと思えば…。(ちょっと惜しい) 私の欲しい物を商品化する。 ウォークマンが出る前に、カセットを聞く携帯用の機械が欲しい と思っていたのを始めとし、色々なヒット商品と呼ばれる機器を発 表前から欲しいと思う事が多かったのだ、馬鹿には出来ない。 今回の商品は作るのが簡単だから、発売のスピードだけの問題に なる。金額的にもラインに乗りさえすれば、充分採算が取れる。 今欲しいのは、携帯に付けるストラップで、受信した時に録音し ておいた音や声が流れる様になるものだ。簡単に言えば玩具につい ている録音再生のチップを少し高性能にして、受信時の電波で自動 再生するという単純なものだ。勿論録音や再生のボタンは付ける。 自分で録音するから、CDからの録音も可能だし、『電話だよ』 なんて声で着信を知る事も出来る。受信レベルの調整であらゆる携 帯PHSに使用可能だから、女子高生を中心にヒットするはずだ。 彼女たちの事だから、携帯ストラップとしてではなく、違った使 い方を考え出すかも知れない。そう、インスタントカメラの次は、 録音再生のストラップさ。 私は製造と発売をしてくれる会社を探した。素人の私が手を出し て儲かる世界でない事は判っている。資金限度は一億円。儲けの何 割かを支払い、その会社に全て任せてしまうのだ。 そして私は中堅どころではあるが、協力してくれる会社を探し当 て、商品化に漕ぎ着けた。 しかし簡単にはいかなかった。私のアイデアは他社へ売り込まれ、 発売一週間前というところで、他社のTVCMが流れた。 先行発売された他社製品は、操作性を重視し、熟年層の女性をも ターゲットにしていた。録音機能を使って携帯のメモを撮るという。 操作が判らない又は覚えようとしない人達に、使い易いボタン操作 一つだけの録音機能を「ウリ」にしていた。「2個目もどうぞ」と いう訳だ。 しかも、アイドルの声を事前に録音してあるバージョンも同時発 売された。 他社の発売先行で、頼んでいた会社は損をしないうちに手を退き、 資金回収も出来ず、一億円は消えた。 宝くじを前に目が覚めた。良かった。夢だった。私はにこにこ顔 で、当りの確認をした。 はずれていた。
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