第6回1000字小説バトル
Entry5
今年の夏は極度の水不足だ。水が出るはずの蛇口はいくら捻って も一滴の水も出てくる気配はない。 店頭に並ぶミネラルウォーターの値段が急激値上がりし始めた。 自動販売機のジュースはすべて売り切れのランプがついている。 あまりにも法外な値段をつける店に文句を言う客にと店主は嘲り の笑みを浮かべつつ、ミネラルウォーターを飲み干した。 客達が喉をならし、声を上げる。そして店主はビールのCMにで も出れそうな至福の表情を見せる。 その時、客の波をかきわけ一人の男が店主に詰め寄った。 「金ならいくらでもある。この店の水を全てよこせ」 スーツ姿の男は財布から小切手を取り出す。店主はへいへい、と 愛想の良い顔でミネラルウォーターを差し出す。 ミネラルウォーターを買い占めた男に客達が取り巻いた。 「おい、あんた、そんなにあるんだから、少しくれよ」 客の一人が男ににじり寄る。男は鼻で笑った。 「これは全て俺のものだ。誰にも渡さん」 その声に客達が暴れ出した。男に殴りかかり、水を奪おうと手を 伸ばす者もいる。 「待て、そんな愚行をするでない。水ならある」 その声を発したのは白髪の老人だった。大きな袋を抱えている。 客達は男を殴る手を止め、老人を見た。 「おい、その袋に水が入ってるのか?」 客の一人がよだれを垂らして言った。 「残念だが、これは私の発明品じゃ」 老人はそう言うと袋を下ろし、中からストローを取り出した。 「これはどんな汚い水も一気に人間の飲める水に変えるストロー じゃ。これがあればどんな液体でも飲むことができる」 その新しい提案に誰かが答えた。 「そんな水がどこにある。川はすべて枯れ、ダムの水さえ…」 老人はたくさんあるストローを悲しそうに眺めた。 客達は男と殴り合いを始めた。体格の良い客が男を投げ飛ばす。 男は頭から地面に落ちた。頭から血が流れる。 客達は男からミネラルウォーターを奪い、飲み干した。 老人はこれを見、発明したストローを男の頭に突き刺した。 そして不浄な血を飲み始めた。客達もそれに習いストローを手にし 争うように男にストローを突き刺し始めた。
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