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第6回1000字小説バトル
Entry50

枕が大きくて

作者 : トク
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文字数 : 920
「ちょっと、もっとあっち行ってよ!右半分は私のところでしょ」
「あーん? うるさいな」
「うるさいなじゃない、私の寝るところがないじゃないそれじゃあ」
「くそ、いちいち起こしやがって、むかつくなー」
「じゃあさっさともっと大きい枕買ってよ」
「おまえも半分金出せよ、おまえだって使うんだし」
「いやだぴょん、そんなの」


 こんな会話を交わしたほんの12時間後、直子は、死んだ。
付き合い始めてから約2年が過ぎたある日の昼の出来事だった。


 その日、俺は新しい枕を買って、家に向かっていた。あいつの好
きなトトロの絵が書いてあるやつだ。きっとやつも喜ぶだろう、俺
としてはちょっと買うのが恥ずかしかったが。
 家に着くとなぜか玄関のドアが開いていた。無用心なやつだ。そ
う思いながら家に入り、ドアが開いていたことに文句を言いながら
半分開いた部屋のふすまを開けた。
  
 そこに彼女の笑顔はなかった、あるのはただ変わり果てた彼女の
姿だった。信じられなかった、目の前に横たわっているのがあの直
子だとは。思わず俺は、情けない声で彼女を呼んだ。返事はなかっ
た、当たり前だった。しかし俺は何度も何度も彼女の名前を呼んで
みた、帰ってくるはずのないその返事を期待しながら。しかし明ら
かに彼女は死んでいた、それは俺の目にも明らかだった。しかし信
じたくなかった、信じればそれで終わりだという気がしてならなか
ったのだ。しかし現実は非情にも、俺のその期待を裏切ってくれた。
 警察の話では犯人は駐車場に面した部屋の窓から侵入し、直子の
寝込みを襲ったらしい。だから部屋の中もあまり乱れてないし、直
子自らが苦しさに耐えかねてつけた首の引っかき傷を除けば、あま
り体に外傷がないらしい。そして犯人は、彼女の首をしめて殺した
後その体を性欲の掃き溜めとし、その後俺の家を後にしたのだ。彼
女の膣内から犯人のものと思われる精液が見つかったらしい。
 そんなことは俺にとってどうでもよかった、もちろん犯人に対す
る憎しみで気が狂いそうになることもしばしばあるが、たとえ犯人
を殺したところで、もう彼女は戻っては来ない。
 警察で取調べを受けた後、俺は一人彼女のいない家に戻った。

 その日俺はわざと古い枕の真中に頭をうずめてねた。彼女により
ふたたび起こされることを期待しながら。しかし次の朝、誰にも起
こされることなく俺は目を覚ました。側には買ったばかりの新しい
枕がある。
 
 今日これを捨てよう、と思った。






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