第6回1000字小説バトル
Entry54
ギッチョンギッチョンと音がするので、僕は目をさました。どう せロビンだろう。うるさいやつだ。 居間へ向かうと、はたしてロビンだった。 「イヤー、スゲー、スゲー、海ッテスゲー!」 ロビンがソファーの上で踊りながら、カタカナでわめいている。 できそこないだった。生まれた時からポンコツだ。モノ好きな親 父が旧友のロボ屋から、不良品をタダでもらってきた。 ポンコツとはいえ、ロボットだから、すこしは役にたつだろう。 そう親父は思ったのだが、ちっとも役にはたたない。朝刊をとって こいといえば、ドアのノブをもいで持ってくる。それでも粗大ゴミ に出すには気がヒけて、まあ動物を飼うより安上がりだろう、とい うことで、電気代を食いながら僕の家に暮らしている。 テレビには、怪物が出たとかいうワイドショーで、どっかの海が うつっていた。ロビンはそれを指さして、表情はかわらないけど、 大きな動作で、さかんにスゲースゲーを連呼している。 「うるさいな。そんなにスゲーの? 海」 「スゲーヨ。ダッテ、青イ、広イ、シカモ全部ガ水ナンダ。青クテ 広イ水ナンテ、スゲーナー、海ッテ」 「そうか。見に行こうか? ホンモノの」 「ワー!」 ちょうどバイトもクビになったところ、時間はクサるほどあった。 原チャリのケツにロビンを積んで、僕らは海に向かった。しきり に海ハマダカ海ハマダカと、バランスをくずそうとする。危ないか ら黙ってろ、と注意しても、ロビンはポンコツだから、言うことを 聞かない。 夏とはいえ、平日のせいか、浜辺はガラガラにすいていた。 「青クテ広イ水ダ! 海ダ! ワーワーワー!」 ロビンは浜辺を走り回った。転んだりもした。それをバカバカし く見ていた僕に、ロビンは言った。 「ナア、海ニハイッテイイカイ?」 「だめ。おまえ、防水じゃないじゃん」 僕は靴とシャツを脱いで、海に入った。泳いだ。クロールとか、 バタフライとか。塩水をのんでウヘーとなったりしたあと、あおむ けにプカプカと浮かんで、ロビンを気にした。浜辺でまだ、スゲー スゲーとはしゃいでいる。早く海に入ってこい。ほんと、役にたた ないロビンだ。電気クラゲぐらいじゃ、ヒトは死ねない。 「おい役タタズ、そろそろ帰ろうぜ」 浜にあがって声をかけた。 「役たたずジャナイヨ。ろびんダヨ」 ロビンの頭をひっぱたいたら、濡れた手からジュッと煙があがっ た。照りつける太陽を見上げて、僕は太陽ってスゲーと思った。
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