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第6回1000字小説バトル
Entry59

ユウサク

作者 : アベタツヤ
Website :
文字数 : 976
 薬を貰いお金を払うまでの間待合室で待っていると、さっきの痛
みなんてもう忘れたよと言わんばかりにマサルは走り回っていた。
そして突然私の前に来て
「パパの友達」
と言って指さした。その先にはユウサクが帽子を目深にかぶりサン
グラスをして、数名の連れとともに歩いていた。

 ユウサクは本名、芸名はサオトメアキラ。今をときめく男性俳優
であり、映画・CMを中心に活躍している。
 ユウサクとは小中学校時代の親友だった。何をするにも一緒で、
川で泳いだり、カブトムシを捕りに行ったりしたことは今でも鮮明
に思い出せる。
 「オレは俳優になるんだ」と彼はいつも夢を語った。私には語れ
る夢が無かったが、それは今でも変わらない。サラリーマンで結婚
をし家庭を持ち、ごく一般的な生活をしている。私とは正反対の、
いつでも情熱的で一途な彼が私は大好きだった。友人であったこと
が誇りに思えた。
 中学を卒業と同時に彼は東京へ出ていった。別れ際私たちはいつ
までも友達であることを約束しあい、離れ離れになっても手紙でや
りとりをしていた。しかし別れてから1年後、ぷっつりと連絡が途
切れた。返事は全く来なくなった。

 マサルを連れユウサクを追いかけた。
「ユウサク」
と声をかけると彼は振り向いたが、私が連れの人に
「どちら様ですか?」
と声をかけられると、ユウサクは踵を返してまた歩き始めた。そし
てそのまま10Mくらい先の病室に1人で入っていった。
「パパ嫌われてるの?」
とマサルが聞き
「いや彼は変わったんだ」
とだけ言うと呼び出しの声がかかり、薬を貰いお金を払って病院を
後にした。
 離れ離れになって18年の歳月が流れ、その間彼は誰もが知って
いる有名俳優となり、私は一ファンになっていた。
 
 マサルとユウサクの映画を見に行った。ユウサクは体当たりの演
技だった。アクション映画にマサルは大興奮ではしゃいでいたのに
対し、私には自然と涙が溢れた。彼の演技は絶賛された。しかし彼
は公開直前に逝き、この映画が遺作となっていた。
 誰もがその姿を目に焼き付けたことだろう。サオトメアキラはス
クリーンに残った。私はユウサクをひっそりと心にしまった。






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