インディーズバトルマガジン QBOOKS

第6回1000字小説バトル
Entry74

暑い暑いくつの中

作者 : 川島圭
Website : http://www03.u-page.so-net.ne.jp/yb3/k-k/
文字数 : 995
 どこもかしこも夏真っ盛りなので、ひろし君のくつの中もやっぱ
り夏真っ盛りでした。
「うわ、あちい。どうにかなんねえのかよ、この暑さ」
 あまりに真っ盛りな暑さに、親指のリチャードは思わずうめいて
しまいました。
「しかもくせえ。くせえくせえ。どうにもこうにもくせえ。あちい
だけなら何とかなるがくせえとなると我慢の堪忍袋の尾が切れる。
おい、中指、おめえだろ、くせえのは」
 あらぬ疑いをかけられた中指の中村は、いつもながらのリチャー
ドの自分勝手な物言いに、落ち着き払った物言いで答えました。
「嫌だなあ、僕が臭いわけないだろう。僕はね、愛ちゃんの右足の
小指のさやちゃんが気になって、臭くなっている暇なんてないんだ。
君じゃないか、臭いのは?いっつも興奮してるから、たぶん君だけ
余計に汗が出て臭いんだよ」
「何だと!」
 おこったリチャードは中村に必殺のヘッド頭突きを食らわせて痛
い目見させてやろうと試みましたが、いかんせんたっぱが足りずに
苦い思いを味わいました。
「ちょっと待ちなさいよ、うっとうしいのよ、ばかリチャード。ね、
中村君、大丈夫だった?もうやんなっちゃうわよね、あいつ」
 人差し指のフミエは、私は中村君が好きなのよ、暑苦しいリチャ
ードなんてうんざりだわ、ね、中村君、とでも言いたげにリチャー
ドをきっとにらんで中村を心配そうに見つめましたが、さやちゃん
が好きな中村にはきっとフミエの思いは届きません。
 3本のそんな騒がしいやり取りをよそに、薬指のMASAと小指
のパウロ3世は一発当てて一儲けしてやろうとたくらんで、みんな
でバンドとしてデビューすべくバンド名を考えていました。
「なあ爺さん、フィンガー5なんてどうよ?」
 MASAがパウロ3世に練りに練ってひねり出したバンド名を提
案すると、パウロ3世はあきれ果てて言いました。
「おいMASAや、フィンガー5というのはもうすでにおるぞ。た
とえいなかったとしても、あまりにもストレートすぎてワシは好か
んな。そうじゃな、モスクワ虫なんてどうじゃ?」
「・・・・・・グッと来るね」
 5本はそんな思い思いの思いを胸に、今日もまたサッカー好きな
ひろし君のトーキックに悩まされつつ、あついあついとうめいたり
中村君中村君と言い寄ったりさやちゃんさやちゃんとのぼせたりバ
ンドバンドと興奮したり生い先短い短いとせっぱ詰まったりしなが
ら、けっこう楽しく過ごしています。
 おしまい。






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