第6回1000字小説バトル
Entry8
二人は抱きしめあっていた。二人には何も残されていなかった。 現実とゆう辛い事から逃げる事を選択した。ここが何処だか誰も知 らない。そこには二人だけの時間が流れていた。二人は選んだ全て を無に帰する事を。すべてのしがらみから逃れ二人になる為に。 その時、彼女はロスの青い空の下にいた。そして彼は、東京の重 い雲に覆われた空の下にいた。二人は空想の中で恋をしていた。そ して、それがいつか現実に変わろうとしていた。二人はまだ、その 事実に気づかぬまま、二人の空間を旅していた。最後に訪れる結末 など考えた事の無い二人がいた。未だ始まっていないのだから終わ りも無い。そう、終わりはないはずの恋だった。それが現実になる までは・・・・・・。 彼はその時知らされた。新しい命が誕生した事を。それがもう終 わった愛の一つの結末となった。彼は愕然とした気持ちの中で彼女 を思った。新しい暮らし、そして終わった愛の代償を彼は選んだ。 彼女は幸せな気持ちとさわやかな空気の中で遠くにいる彼を思っ た。彼女の恋人は仕事だった。異国でしかも一人でキャリアを積み ビジネスと過ごしてきた。東京の辛い思い出を忘れる為仕事に打ち 込んだ。自分の信じた人に裏切られ捨てられ、人を信じる事を忘れ た。そんな彼女の気持ち、心を開いたのが彼だった。彼女は知らな い。彼もまた、彼女に同じ試練を与えようとしている事を。 それは一つのメールが始まりだった。「ソーシャンクの空に」二 人を結びつけた映画。二人が違う環境で何本も見た中で一番心に残 った映画。そこにあるのは「希望」。どんな状況でもあきらめない 気持ち。二人はそれを自分と照らし合わせ刑務所の壁と自分の心の 壁…これを打ち破る事の素晴らしさを知った。そして彼女の心は彼 に開かれた。 彼は悩んだ。どうゆう形でこの恋を終わらせるのか。その時自問 したのがまだ始まっていないとゆう現実。始まりが無いのに終わり など無いのだと…。彼は自分の中にこの事実を閉じ込め現実に眼を 向けた。彼の中では終わったのか・・・。 彼女は彼の現実は知らない。自分の中の空想だけでしかなかった。 彼女の空想の恋は始まっていた。彼に対する信頼も生まれていた。 彼女は待っていた。彼の事を。 そんな彼女を彼は裏切れなかった。彼は選んだ。全てを失っても 彼女を選んだ。そして彼女も全てを失ってでもかれといることを望 んだ。現実の中ではなく幻想の中で二人は幸せになる事を望んだ。 二人は抱きしめあいながら遠い空を見上げた。同じ空の下で。
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