第7回1000字小説バトル
Entry11
「やったぞ。遂に完成じゃ」 「博士、何が完成されたのですか?」 「うむ。この世の中に風邪薬は数あれど、すべて咳や鼻水、頭痛、 発熱といった症状のみに対して有効な物ばかりじゃ。しかし、今回 わしが発明した風邪薬は、風邪の根源であるウイルスに直接作用す るという画期的な薬なのじゃ」 「おお!それはすごい!本当におめで……あ」 「どうしたのかね」 「博士、もしかしてその薬には致命的な欠陥があったりしませんか」 「むむ、するどいな。さすが長年わしの助手をしておるだけのこと はある。そうなのじゃ。ちょっと問題がのお」 「やはり……だいたいこんな話の時はそんなオチが待ってるもので す」 「そうなのか?」 「そうです。私も伊達に多くの小説を読んでませんよ」 「何やらよく分からんが、そんなものなのか」 「では私の経験でその問題点を当ててみましょう」 「ほう」 「薬がものすごく大きいとか、かなりの量を服用しなければいけな いとか?」 「いや、それはない。大きさは見ての通り普通の錠剤と変わらんし、 服用も1回2錠でOKじゃ」 「では、治るまでに時間がかかるとか」 「それもない。まあ体に吸収されるまでの時間はあるじゃろうが、 通常の薬よりは早いはずじゃ」 「死ぬほどまずくて、とても服用出来るものじゃないんだ」 「味までは考えておらんかったが、そんなにまずいものでもないと 思うぞ」 「風邪が治る代わりに別の病気にかかってしまうってのは」 「この薬は風邪のウイルスにだけ効力があるのじゃ。それに助手よ、 そんなもんは薬ではないぞ」 「じゃあ副作用はないと?」 「全くない」 「逆に風邪ではない時に飲むとまずいとか……」 「身体には無害な物質で作っておるから、それも問題ない」 「コストの関係で値段がものすごく高いのでは」 「今は少々高めじゃが、大量生産出来るようになればその心配もな いじゃろう」 「まさか、実験用のハムスターには効いたけど人には効かないなん て……」 「いくら何でもそれは失礼じゃないかね?人間の風邪を直さんで何 の意味があるのじゃ!」 「すいません。では、一体問題点とは何なんですか?」 「うむ、この薬はちょいと溶解性が弱いんじゃ」 「まさか、大量に水を飲まなきゃいけないんですか」 「水で服用するとなると20リットルは欲しいのぉ」 「そんなに水は飲めませんよ!」 「先に水で溶かして飲むのはどうじゃろうか」 「それなら何とかなりそうですね」 「但し、20リットルの薬になるがの」
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