インディーズバトルマガジン QBOOKS

第7回1000字小説バトル
Entry2

もう一人の私

作者 : ケイジ
Website : http://ha.sakura.ne.jp/~keiji
文字数 : 961
私は今日もいつもどおりに目が覚めました。時計を見ると7時を回
っています。急いで支度をして出勤しました。同期で入社した他の
5人とも仲が良く、それなりにうまくやっています。しかし、最近
ふと考えるようになってしまいました。私は何のために働いている
んだろう。自分のキャリアアップのため?貯金のため?愛する人の
ため?どれもあてはまるかもしれません。けれど、小さい頃の私の
夢は違ってました。何か違う。そう考えるようになりました。 

そんな私がいま、心から解放される場所といったらインターネット
かもしれません。インターネット上の会話はキーボードから打ち込
む文字。だから、簡単に新しい自分を作り出すことができます。仕
事の不安などすっかり忘れられるインターネット上には年齢や職業、
性別までも偽ったもう一人の私がいます11時過ぎ・・テレホの時間
になると私はもう一人の私、ネット上のみに存在する人間、ハンド
ルネーム「ケイジ」に生まれ変わります。 

私は、簡単ながらホームページを持っています。架空の「ケイジ」
という人物を少しでも具体化しようと思ったからです。写真等は私
の以前交際していた彼の写真を使っています。本来なら許可を得な
ければ使えないのですが、許可を得るにも彼はもうこの世にいない
ので勝手に使っています。2年前、交際中にこの世から去った彼を
忘れられないのかもしれません。死んだ原因は思い出せません。 

ホームページの方はまずまずの盛況です。毎日のように決まって来
てくれる方もいます。ここに来る人たちは、ケイジという人がこの
ページを作っているものだと思っています。疑う余地もありません。
ただ、親しくなるうちに「会う」ことになったりすると面倒です。
会ったらバレてしまいます。電話番号の交換の話になりそうなとき
も、うまく話をそらしたりするのが大変です。それでも、どうして
も無理なときは、ケイジに少し似ている友人に頼んだりもしました。
罪悪感を覚えたこともあります。私のしていることは間違いなので
しょうか。私はただ、ネット上の私を生きているだけなのです。  

本当の私を知りたいですか?そんなことを聞いてもなんにもならな
いでしょう。ここに来る人はケイジとの交流を求めているのだから、
本当の私は無意味な存在。でも、ケイジは私で、私はケイジ。私が
いなくなったら・・・このページも終りです。






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