第7回1000字小説バトル
Entry28
その夜、こんな夢を見た。 辺りは果てしなく続く地平線ばかりで何もない。僕の手には桃色 の風船が握り締めてあった。それはゆっくりと膨らみ出し、みるみ る軟らかな楕円球を作り出していった。適度な大きさになったとき、 僕は幸せだった。その軟らかな感触、半透明に赤らんだ体、まるで 恋人のようにいとしく感じた。僕は彼女を抱きしめていた。このま ま永遠へと行ってしまいたい気持ちだった。 その時、空から一羽の烏が現れた。彼はまるで僕の不幸がなんで あるか知っているかのように風船を狙った。僕は負けじと必死にな って風船を抱えた。烏はあくまで風船を狙っているようで、僕を傷 つけようとはしない。しかし、しばらくすると僕の体をつつくよう になってきた。それどころかいつのまにか烏の数が増えている。僕 はどんなに傷つこうとも彼女を守ろうと思った。腕にも力が入り、 彼女はだんだんいびつな形になっていった。烏の攻撃がいよいよ過 激になったその時、 <風船は乾いた音を立てて割れてしまった> 風船の中には、きれいな小石が入っていた。 目覚めると、時計は5時半を回っていた。暁が部屋を照らし始め ている。少し寒気だった空気の中で、自殺した彼女が頭に浮かんだ。 僕は彼女を愛していた。あまり荷を愛してしまったがゆえに、彼 女にほかの男とあわせるのを嫌った。彼女は同意してくれた。僕の 部屋の中に閉じこもって、僕が帰るのをずっと待ってくれた。たま に外に出るとしても、彼女は決して男には目をむけなかった。 彼女が死んだとき、彼女の小指には赤い毛糸が結び付けてあった。 そこに続くものは、渡した覚えのない指輪だった。
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