インディーズバトルマガジン QBOOKS

第7回1000字小説バトル
Entry5

TEA待夢

作者 : XXY
Website : http://www.cyborg.ne.jp/~xxy
文字数 : 601
  それは、泡沫の夢のように、たよりないほどちいさな物語……。

 まもなく約束の時間だ。
 時計を見てから、いつものように窓際の席に座り、紅茶を注文す
る。
 眺めの良い、二階の喫茶店。
 眼下を流れる人々の姿を、わたしはぼんやりと見つめた。
 通りの向こう。
 駅の構内から出てくる人。
 構内へと消えていく人。
 男と、女と、いろいろな、顔。
 まだこない、あのひとを想いながら、わたしは紅茶一杯分の時を
過ごす。

 テーブルにはティーカップ。
 砂糖が二杯の、甘い紅茶。
 たゆたう湯気が、初恋のように儚く、霞んでは消えていく。
 待つのはキライじゃない。
 だけど待たせるのはキライ。不安になるから。
 だから、賭けてみる。
 紅茶一杯分の時を、
 待たせるだけの、わたしの価値を。

 いつもの時間、いつもの場所。
 湯気の向こう、窓の向こう、通りの向こうに、忙しなく時計を覗
く姿を見つけた。
 はやる気持ちを抑えながら、琥珀色の液体を呑みこむ。

 早く、行きたい──。

 あふれてくる気持ちの奔流。
 過ぎるほどに焦がれる想い。
 高鳴る鼓動。
 紅茶一杯分の幸せに、わたしの体温が上がる。
 待つひとがいる喜びを感じながら、わたしは走りだす。

 そして、いつものように遅刻するわたしに、微笑むあのひとの胸
へと、両手を広げて飛び込む。

 壊れないように、無くさないように、大切な想いを詰め込んで、
ちいさな、ちいさな物語は、今日もどこかで語られている……。






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。