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第8回1000字小説バトル
Entry1

キレル・キマル

作者 : わーすけ
Website :
文字数 : 835
〜今朝はなんかチガうな……〜

 タイマー替りにかかるハズのFMがなぜか今日は鳴らなかった。
煙草が切れているのに気が付いたのは、今日2杯目のコーヒーを口
にした時だった。チェーンスモーカーである彼にとって、目覚めの
一服を奪われる事以上の苦痛は見当たらない。果たして、カートン
買いした最期の一箱と気付くや否や、その掌に300円握り締め、
その足は自販機へと向かっていった。

〜でも何故だろう〜

 確か昨夜も眠る前に煙草を吸った。もはや、朝と夜の喫煙は、彼
の生活の一部となっている。いつもなら買い置きを忘れる事はない
のだが。ようやく着いた自販機の前でその答えが見えてきた。

〜そうか、ついてないってか〜

 彼がお気に入りと決めているラッキーストライクの下で、売切れ
の文字が赤く笑ってる。仕方なく別の銘柄でとりあえずこの渇きを
凌ぐ事にした。あまりにいつもと違うシチュエーションに少々戸惑
いつつ、今日初めての一本に火を点す……。

〜嘘だろ、オイ〜

 小気味良いカシュッ、カシュッ、という乾いた音と共に、ジッポ
ーは、蒼白い火花を口から吐いていた。一見にしてガス欠と理解る
ライター相手に悪戦苦闘しながら、彼は家路へと足を急いだ。

 ようやく家に着いたときには、肺は酸欠状態にも近い悲鳴を上げ
ていた。至福の一服にもなろうかとも云うべきこの一吸は、なんの
因果があって齎されたのだろう。今朝の出来事が、ふと彼の頭の片
隅を過ぎったが、アドレナリンが分泌し始めたニコチン中毒の彼の
中に、ソレを考えるだけの宇宙は存在し得なかった。

〜何も変わらないね、何も〜

 ルーティンワークと化した喫煙も、タスクを負えばこれまた格別
だなんて、この煙草が吸い終わるころにはもう忘れているだろう。
それって、結局時間と苦痛の浪費なのだ。ぼんやりとした煙の中、
彼は確信に近い信念を、単純すぎる思考回路で弾き出したのだった。
彼にとれば今日1日、可笑しなツイテナイ日であったとしてもその
状況でヤニを咥えられれば、あんまり変わり無いのではないか。






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