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第8回1000字小説バトル
Entry18

売人街

作者 : 望月優輔
Website :
文字数 : 1000
「オニイサン!買っていって!可愛い女の子、入荷シテル!若い子
沢山イルヨ。ガイジンもイルヨ!」

家族を失った。炎に包まれた我が家が、崩れ落ちる。俺はバイトの
帰りに貧しい友達といつものように飲み歩き、帰って来ようとした
その時だった。
幸い、うちの近くの消防署はまだ機能していて、出動がかかり、汗
臭い消防士達が俺の家を消火していたが、みるみるうちに俺の家は
崩れ落ち、それから家族は全員黒くなって発見された。
原因はタバコの不始末。……タバコか。
……親父はタバコ吸わないのに。

バイトの休みの日に、俺は東凶に行った。まだ、この国の首都が大
阪じゃなかった頃、東凶が首都だった。でも、どこかの国がミサイ
ルを打ちこんで、ボロボロになったんだとか。俺が生まれる前の話
ね。こっちの静岡の方まで中学抗争のしわ寄せが来ちゃって入学し
たてなのに中退しちゃって、バイトをはじめたから頭があんまり良
くないし、歴史も知らん。だから最近は新聞を頻繁に読んで勉強し
てる。本屋もあるけど、本はあまり信用できないってバイトの人が
言ってた。なにしろ、東凶が首都だった時に書かれた本ばかりだか
ららしい。なるほど。

駅には「東京」って書いてあった。本当はこう書くのか。こっちの
方が格好がいい。有名なトントン電車に乗って売人街に行った。ト
ントン電車は気持ちが良い。神田を過ぎてすぐが売人街の駅
元々ここの売人街は秋なんとかいう地名があって、人じゃなくてパ
ソコンとか電気製品をよく売ってた街だったらしい。俺は結構東京
には詳しいんだ。いつも保育所のガキどもに東京の話をしてやる。
……そうだ。東凶は東京って書く事をしっかりあいつらにも教えて
あげないと。……教育はリアルタイムだ。
何で俺が売人街に来たか、それは言わなくてもわかってるでしょ。
寂しいじゃん。お金ガッポリあっても一人ぼっちじゃ寂しいじゃん。
新しい家族を買うんだよ。いい家族を構成しよう。まずは知的な父
親と優しい母親。あと妹と弟だ。

新生・神崎家のでーた。
神崎俊輔 20歳 オレ。
神崎陽一 41歳 長野出身。未婚。リストラの果てに競売。「タ
         ランチュラ」中年男性売り場出身。
神崎香奈 40歳 千葉出身。離婚1回。殺人者の元妻。賠償金支
         払えず競売。「サンコー」婦人売り場出身。
神崎彩乃 7歳  神奈川出身。ミサイル事件の孤児。親戚の手に
         よって競売。「サンコー」子供売り場出身。
神崎慶太 5歳  静岡出身。家庭側が育児放棄。競売。「サンコ
         ー」子供売り場出身。

よし。とりあえずこの5人で暮らそう。

彩乃と慶太が煙たがるし、前の家族みたいにオヤジもタバコ吸わな
いから……

俺もそろそろ……タバコやめようかな……。

でも、またこの家族が嫌になったら、タバコ吸いはじめればいいわ
けだし。でも、逆に俺がやったみたいに、商品人間にタバコの不始
末で焼かれちゃったりしてね!
それは勘弁勘弁……。






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