第8回1000字小説バトル
Entry24
入道雲が応援してくれました。太陽がバンザイしてくれました。 セミが喜んでくれました。がんばった夏休みです。 夏休みは学校のプールを自由に使うことができました。ある日の ことです。いつも水泳を教えてくれる山中先生が言いました。 「もしこの夏休みで二十五メートル泳ぐことができたらアイスクリ ームをごちそうしてあげるよ」 ボクは水泳がきらいでした。 プールは好きだよ、浮き輪とかボートに乗ったりプールサイドか ら飛び込むのは好きなんだよ。 山中先生のアイスクリームの話で、友だちのヒロ君とシゲちゃん はやる気まんまんでした。 「先生、ホントウ!」 「ゼッタイだよ!」 でもボクは言いました。 「できるかなあ」 それを聞いた山中先生はボクに質問しました。 「アイス食べたくなあい?」 「そりゃあ食べたいよ」 その日は朝からとても暑い一日でした。入道雲が不安そうにボク を見守っています。3コースにヒロ君、4コースにシゲちゃん、5 コースにボクが入りました。山中先生はニコニコ笑っています。 「大丈夫。あれだけ練習したんだ。できるよ」 太陽もうなずいています。といってもやはり心配なのか見ていら れない様子です。太陽は雲で顔をかくしてしまいました。プール全 体が雲の影に入り少し暗くなるとしーんと静まり返りました。 『ピーッ!』 山中先生が笛を吹くとボクは二十五メートル先のアイスクリーム を目指してクロールで泳ぎはじめました。もちろんヒロ君もシゲち ゃんも泳ぎはじめました。 「がんばれっ、がんばれっ、がんばれ」 プールの横に植えられている楠の木でセミも大きな声で叫んでいま した。 がんばった夏休みです。 たった3週間前は息つぎができませんでした。でも今はできるよ うになっています。山中先生はずっとニコニコ笑っていました。 ボクは気が付いていませんでした。太陽が顔を出して応援してい てくれたことを。明るく照らされたプールの横では何ごとかと思っ たヒマワリまでも首をのばしてプールをのぞき込んでいます。もち ろんボクはヒマワリが見ていてくれたことも知りませんでした。 ボクが気が付いたのは山中先生が両手を上に伸ばして喜んでくれ ている姿でした。 入道雲が応援してくれました。太陽がバンザイしてくれました。 セミが喜んでくれました。がんばった夏休みです。 三人で食べたそれはとても冷たくてとても甘く、暑かったその日 には最高のおやつとなりました。
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