インディーズバトルマガジン QBOOKS

第8回1000字小説バトル
Entry8

天秤

作者 : サトコフ
Website : http://www.aaw.mtci.ne.jp/~satokov/
文字数 : 827
セミが鳴いていても
誰も疑わない季節の話

とても正確で頑丈だと巷で評判の
それは軽トラックじゃないと持ち帰るのが大変な
とてもとおっても大きな天秤を買ってきて
僕は早速それを近所の河川敷にある野球グラウンドに置いてみた

僕にはいろんなものを測りたくて
ウズウズしている気持ちがあったのだ

いてもたってもいられなくて
足の下で「のほほん」としている砂利を片方の皿にのせてみた

ガコォン

天秤が傾いたので
嬉しくてつい僕も体を傾けてしまった

無我夢中で
ありとあらゆるモノを天秤にかけてみた
力士とコショウを天秤にかけてみたとき

ガグォオゥン

と、あまりにスゴイ勢いで力士が下がったので
天秤が壊れたんじゃないかと心配したけど
力士とコショウを払いのけたら
天秤は何事もなかったような顔をして
ちゃんと水平に戻ってくれたので
僕は安心して続きをすることができた

日も暮れてきたので
これを最後にしようと
ウソと真実を天秤にかけてみた
ウソは軽いけど沢山あるし
真実は少ないけど重いから
これは面白そうな組み合わせだと
ワクワクしながらのせてみた
ウソはすっごい大きいから
のせるのにはなかなかコツが必要だったのだけど
ふぅふぅ言いながらも
なんとか天秤にのせることができた

ぶぅらん、ぶぅらん、ぶぅらん。

天秤は、何度かお互いの地面を目指して
押したり引いたりを繰り返したのだけど
結局は釣り合ったまま動くことをあきらめてしまった
僕は試しに、
「こんなのウソだ」って
口に出してみたのだけど
天秤はウンともスンとも言わなかった

日がすっかり沈んでしまったし
お腹もずいぶん減ってきたので
僕は天秤を持って帰ろうと
ウソと真実を皿からおろすことにした

でも真実は重くなりすぎていて
とても持てそうになくなっていた
ウソはあまりにも膨らみすぎていたので
どこから手を付けて良いやら分からなかった
少しかじってみたけど
甘すぎて空腹には合わなかった

月を眺めるのに丁度いい時間になったので
僕は正確で頑丈な天秤を河川敷の野球グラウンドに置いたまま
軽トラックに乗り込んだ






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