第9回1000字小説バトル
Entry10
卒業した専門学校から、毎年送られてくる校友誌に目を奪われて いた。 僕らのクラスで一番のアイドルだった洋子の近況報告が載ってい たのだ。 「最近離婚しました。卒業してから10年近く立ち寄ってもいなか ったキャンパスに足を踏み入れました。あの頃抱いていた夢が、ふ たたびわたしを襲ったのです。子供ともども第2の夢に向かってス タートです」 その洋子のコメントにつられるように、専門学校のキャンパスに 寄ってみることにした。駅は新しく改装されている。駅前のパチン コ店では、昔はカレンダーの番号台がよく出たが、今はどうだろう か? 弓道場はまだ残っていた。スマートボール店もあったと思っ たが… キャンパスの中に入ると、あの頃の思い出が心のどこからか湧き だしてきた。僕は洋子と少しの間付き合ったことがあった。校門の ところでみんなで集まっては遊びに行き、みんなと別れた後でふた りだけで逢っていた。その関係は僕に新しい女ができるまで続いた っけ… 急に肩を叩かれた。 当時の同級生の信夫だった。 「もしかしたら校友誌の洋子のコメントを見て?」 それは図星だった。 そのままあの頃よく行っていた「ラセーヌ」へ行くことになった。 そこではまた、懐かしい顔に逢った。洋子と結婚をした柴田だっ た。あのコメントでは離婚したとなっている。 「よう! 元気そうだな!」 「お互いにな!」 柴田の手前、洋子の話はしずらかったが、柴田自身から話し始め た。 「洋子とは離婚したんだ。子供はひとり、一輝っていうんだ。僕が 引き取ることになった」 コメントと違う。 「そうだったのか? 洋子は放棄したのか?」 「いや、死んだ。自殺したんだよ。それも僕らの教室だったところ で薬を飲んで…弱い女だよ。何かといえば昔話を持ち出しやがって」 「なんでまた」 僕と信夫は顔を見合わせた。 「学生の時の夢を思い出したらしいんだ」 「夢?」 「どんな?」 「あのころのグループの中に、みんなには黙って付き合っていた奴 がいたんだ。洋子の夢はそいつと結婚することだった」 「いったい誰だったんだ?」 信夫が言う。 「離婚も洋子の中にいた、そいつのせいなんだよ」 柴田の目はしだいに充血してきた。そして僕の瞳を見続けていた。
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