インディーズバトルマガジン QBOOKS

第9回1000字小説バトル
Entry22

ある晴れた朝

作者 : 紺詠志
Website : http://www.geocities.co.jp/HeartLand/7945/
文字数 : 998
 カレのアタマから流れるアラームで、わたしは目を覚ました。パ
ジャマごしにウデの感触、ほんとうは冷たいはずなのに、なんとな
く、あたたかく思えるのは、どうしてだろう。わかっているけど、
わからないフリをしていよう。足元にシーツの乱れを感じて、そう
決めた。
 カレのセナカに手を回して、セボネのあたりに指紋を押しつけた。
コトンと音がして、カレのメが開き、アラームがやんだ。「おはよ
うございます」とカレ。おはよう。
 カレは、わたしがムネから離れるのを待って、ベッドから出た。
カレがカーテンを開ければ、おだやかな朝日が、部屋の中を象牙色
に染め、窓の外に、向かいの高層マンションが、かすんで見えた。
「今日はスモッグが薄いようです」。そう、いい朝ね。
 カレはキッチンに消えた。やがてコーヒーのかおりがただよって
きて、わたしもベッドを出る。窓をのぞいて、はるか地上の道路を
見おろし、車がまばらなのを知って、日曜日の朝だと気づいた。
 カレがコトコトと、カップとトーストの乗った皿をゆらし、ト
レーからテーブルに並べた。「朝食の準備ができました」。見れば
わかるわ、ありがとう。

 カレは細かな筋肉の動きや、体温をのぞいて、人間そのもの、中
性的で、きれいな顔だち。わたしの好きなように、つくられていて、
わたしの望むように、ふるまってくれる。
 カレを買ったとき、店の主人は、いやらしい顔をして、夜の方も
すばらしいですよ、と言った。わたしは、なんだかむなしいから、
夜の機能なんて、ためす気がしなかった。おとといの、わたしの誕
生日に、友人からあのカプセルをもらうまでは。

 カレは昨夜、わたしの命じるままに、自分でそのカプセルを取り
付けて、わたしの希望どおりに、部屋の明りを消してくれた。

 カレのメは、その時と変わらない無表情で、わたしのつけたテレ
ビから、くだらないモーニングショーのデータをインプットしてい
た。くだらないから、テレビを消すと、「もし受精に成功していた
ら」ふいにコマンドを求めてきた。「どんな名前をつけましょう
か」。わたしは少しおどろいて、そしてクスリと笑ってから、こた
えた。その前に、あなたにナマエをつけてあげる。
 カレのホオが、少しゆるんだように見えたのは、きっと気のせい。
今日はなにをしよう。なにもする気にならないから、カレのナマエ
を考えながら、ずっとここでこうしている、そんな日曜日も、わる
くないかもしれない。






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