第9回1000字小説バトル
Entry31
ジョーイは単細胞だったがここぞという時の集中力には恐ろしい ものを持っていた。 ある日ジョーイは競馬でしこたま負け、憤慨して家に帰ってきた。 「畜生、過去に行ければ、競馬に一泡ふかせられるのに」 その日からジョーイのタイムマシーン作りが始まった。ジョーイ は一心不乱に研究を続けた結果、一週間後、、遂にタイムスリップ する錠剤を完成させた。最初にイメージしていたのは乗り物だった が、過去に戻れるのならノープロブレムだ。 ジョーイは家中の金をかき集めて競馬場に向かった。全部で60 0ポンドあった。錠剤は3錠だけだ。 ジョーイは早速レースの検討をして、7番の馬に600ポンドを 注ぎ込むことにした。窓口に並んでいると、近所のウィルモアじい さんが近付いてきて、 「おおジョーイじゃないか。今度のレースは9番じゃぞ、9番」 と言ってきたので、 「参考にするよじいさん」 と答えて実際には7番を買った。なあに、もしも9番が来たときに は過去に戻って買い直せばいいんだ。 レースははたしてじいさんのすすめていた9番が圧勝、7番は終 始ビリケツだった。いつものジョーイならここで憤慨し、騎手に罵 声の一つでも浴びせに行くのだが、今日のジョーイは落ち着いてポ ケットの中から錠剤を1粒飲んだ。1粒飲んで30分前にタイムス リップ。 30分前に居た場所、すなわち馬の彫像の前に現れたジョーイは、 よしとばかりに時計を見た。ちゃんと30分前だった。 「おおジョーイじゃないか。今度のレースは9番じゃぞ、9番」 「本当かい!今回はじいさんを信じてみるよ!」 ジョーイは600ポンドを9番に注ぎ込み、それからオッズを見た。 18倍、と画面には映っていた。ジョーイは何度もにやにやしてい た。 レースは僅差で6番の勝利。当の9番はまるでスキップでも踊っ ているかのように断然のビリケツを歩いていた。ジョーイは少し混 乱してきたが、頭をブンブン振ってからまた錠剤を飲んだ。 馬の彫像→じいさんの声→6番に全部。 ジョーイの願いもむなしく、またもや6番は逆立ちして走ってい るかのようにビリケツだった。ジョーイはイライラして、騎手にで はなく空に向かって罵声を浴びせた。それからジョーイは最後の1 錠を飲んだ。 雲の上では白い髭と杖を持ったじいさんが、ウヒヒと笑っていた。 ジョーイが最後に買った7番は、後ろ向きに走っているようにビリ ケツだった。ウヒヒ。
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