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第9回1000字小説バトル
Entry33

宝者へ

作者 : アベタツヤ
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文字数 : 993
 僕は大学を辞めませんでした。
何でかって? 一応のゴールが欲しかったからです。
でも彼は辞めました。彼にはゴールなんて無かったからです。

 「山下、就職どう?どっかいけそう?」
そう彼が話し掛けてきたのが辞める三日くらい前でした。
「んー、ボチボチやな。人見は?」
「俺決まった……」
「マジで?」
「ンー、でもあんま行きたくないけどな。でも就職活動ももういい
かな。疲れた。自分じゃないみたいなのもいややし……」
「でもいいやん。とりあえず決まった訳やし。進路が決まると取り
敢えず安心するやん。俺もうちょっと続けんといけん訳やで」

 特に変わったことはありませんでした。いつもの友達といつもの
会話をしているだけでした。只僕達は
「大学なんて来ても来んでも変わらんよな」
いつもそう話していました。特に就職活動時期はその思いが一気に
高まった感がありました。自分を見つめ直す良い機会だったと思い
ます。

 「大学って自分次第。でも俺社会に出たくなかった、親に進めら
れた。勉強する気なんてさらさら無かったけんな。社会勉強ってい
う意味では、確かにそうなんやけど……」
 
 悩み抜いたと思います。そして
「俺学校辞めるわ。四年まで来て勿体無いかもしれんけど、今辞め
るのも卒業するのも、俺の中では一緒やけんな。」

 彼の判断は正しかったと信じます。僕もそうしたかったけど勇気
が全然足りません。そんな判断が下せるようになった彼の三年半が
後に貴重なものとなってくれているのを、僕は信じきります。

 いまだ「大卒」の肩書きに振り回される親達に僕達は翻弄されま
した。「甘い」といった批判は「全くそのとおり」受付けます、ご
めんなさい。それでも「甘ちゃん」の僕だけでも、そう声を発しな
ければならないと思いました。
 
 「誰かを認めるときって資格や肩書きやない。そいつの心に触れ
たときに、本物やと感じれるかやで、なー!?でも取り敢えず俺、
天の邪鬼やけん。はっはっ」

 人見君、今どこで何をしているでしょうか?君が大学を辞めても
う二年が経ちました。本物のあなたに心配は無用なのかもしれませ
んが、周りの人達が色眼鏡で君を見ていないか、それだけが心配な
んです。
 俺、今でもお前の親友やと思っとるけんな。






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