インディーズバトルマガジン QBOOKS

第9回1000字小説バトル
Entry8

雨上がりの寒空に

作者 : DIPSY
Website : http://member.nifty.ne.jp/Colours/
文字数 : 約803字
 私が小雨の降りしきる寒空の中、傘を差して国道246号線沿い
の道を歩いていると、御下げ髪の女性に目がとまりました。彼女は
ミニスカートを履き、傘も差さずに小さな歩幅でてくてくと、私の
前を非常にゆっくりと歩いていました。私の目が彼女にとまったの
は、何も傘を差していなかったからではありません。まして寒空の
下で露わになっている2本の足に見とれていた訳でもありません。
彼女は裸足だったのです。
 私は彼女の事を不憫に感じたので、傘に入れて上げようと若干歩
幅を大きくとりました。(私にはいくらかの下心があったのかもし
れません)

「濡れますよ」
 私が声を掛けると、彼女は非常にゆっくりと顔をこちらに向けま
した。するとどうでしょう。その女性は私の頭の中で描いてた、若
くて清楚な女性とは程遠く、孤独な中年女性でしかありませんでし
た。
 彼女は私の方に顔を向けてはいるものの視線は定まらず、私をす
り抜けて遠くの方を見ているようでした。私の事に気が付いていな
かったのかもしれません。
 私は更に大きく歩幅をとり、早足で彼女を追い抜いていきました。
私は見てはいけない者を見たような気がしてしまい、酷く落ち込ん
でしまいました。
 真っ直ぐに伸びた道をどれくらいかは覚えていませんが、しばら
く歩いた時です。私は彼女の事が気になり、後ろを振り返りました。
 しかし彼女は同じ場所に立ち、遠くの方を見つめているだけでし
た。私はかなりの距離を歩いていたらしく、彼女は小さくしか見え
ませんでしたが、笑っているように見えました。
 私は彼女の事を少しの間見つめていました。
 小雨が止んだ時、彼女はまた非常にゆっくりと歩き始めました。
それを見て私も歩き始めましたが、傘はその場所に置いていきまし
た。私が少し歩いてから振り替えると、彼女は私の傘を差して笑い
ながらてくてくと歩いていました。
 それを見て私は、非常に良い事をした気持ちになってしまい、濡
れた路地を駆けていきました。






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。