第9回1000字小説バトル
Entry9
「はい、もしもし?」 「あ、やっとつながった。もしもし、ちなみ? 俺だ。一宏だ」 「あ、一宏くんか。どうしたの?」 「どうしたの、じゃないだろ。さっきから何度もかけてたのに、ち っともつながらないじゃないか」 「しょうがないでしょ。だって携帯、充電してたんだもん。それよ り、まだ家帰ってないの? これ、公衆電話からでしょ?」 「ああ、そうだよ。言わなきゃいけないことがあったのを、思い出 したんだ」 「言わなきゃいけないこと?」 「そうだ」 「ねえ、それって明日じゃダメ? あたし、明日も仕事だから、そ ろそろ寝ようとしてたんだけど。あ、明日仕事なのは一宏くんもか」 「今、聞いて欲しい。これは俺の、一世一代の勇気を振り絞っての 電話なんだから」 「……もしかして、酔ってる? 一宏くん」 「まさか。酔ってない酔ってない。酔っぱらってなんか、いないぞ ぉ!」 「嘘。そうやってムキになるのが、絶対にべろべろになってる証拠。 飲んだんでしょ」 「飲んでない」 「嘘」 「……す、少しだけだって。ちなみと別れたあと、カクテルを二杯。 それだけだって」 「やっぱり飲んでたんじゃない。本当はもっと飲んでるでしょう」 「飲んでないって。神に誓って、二杯だけ」 「じゃあなんで、こんな時間になってから電話してくるのよ。あれ から二時間は経ってるわよ」 「踏ん切りがつかなかったんだよ。酒を飲んだのだって、そのせい だ」 「大げさねえ。で、何なのよ、用件は」 「……なあ、俺たちって、つき合いだしてから随分になるよな」 「何よ突然。でもそうね、二年以上にはなるわね」 「二年と七ヶ月十四日六時間二十三分だ。さっき計算した」 「暇人。ねぇ、話ってそれだけ? じゃあ切るわよ」 「おい、ま、待てよ。本題はこれからだ。本当は、今日、直接言お うと思ったんだ。だけど、切り出すきっかけがなくて」 「そういえば一宏くん、落ち着きなかったよね。あれは、あたしに 何か話があったのね。今更そんな気を遣う仲じゃないでしょうに。 言いたいことあるんならさっさとどうぞ」 「あのな、レストランでちなみの鞄の中に……」 「あたしの鞄の中? ……何もないわよ」 「入れておこうと思ったんだが、化粧室に持ってっちゃっただろ」 「もう、一体何なのよ。あたしの気が長くないの、知ってるでしょ ?」 「だから、モノは今度渡す。いいか、言うぞ……あっ!」 「どうしたの?」 「カードがもうない! だから携帯は嫌いなんだ! ちなみ! 俺 と結
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