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第10回1000字小説バトル
Entry10

慈善ということ

作者 : 工藤裕也 [くどうゆうや]
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文字数 : 977
 クリスマスも近づくある日、街の牧師が貧しい子供達のためにク
リスマス会を開くための募金を始めた。その話を聞いた十人ほどの
人々がその活動に加わった。彼らは小さな箱を持って道ゆく人々に
僅かなお金を求めて歩き回った。
 たまたま私用のために牧師が活動を休んだある日、お金を集めて
回っていた彼らの前に、良い身なりをした初老の男が現れた。彼ら
の中の一人が募金箱を差し出すと、男は首を横に振り、冷たく募金
を断った。男の態度に彼らは皆、不快な顔を示した。「少しくらい
はお金を入れても良いものなのに」とこぼす者さえいた。
 やがてクリスマスイブの日を迎えた。満足なクリスマス会が開け
るほどのお金は集まらなかったが、それでも参加した彼らはそのお
金を使ってデコレーションを買い、教会の飾りはじめた。その間に
牧師は街中をまわり、子供達を集めた。
 会のための支度が全て整った頃、教会の外は暗くなっていた。街
の子供がたくさん集まり、牧師がオルガンを奏でると、クリスマス
会は静かに始まった。
 讃美歌の斉唱の後、牧師が聖書を読みはじめた。子供達は退屈そ
うな顔で牧師の方を見ていた。
 やがて会も終わりになり、子供達にお菓子の入った袋が配られた。
子供達は袋の中を開けると皆浮かない顔をした。子供達がなぜそん
な顔をするのか、牧師以外の彼らには誰も理解できなかった。
 そこで教会のドアが勢いよく開く音が響いた。皆が音の方に目を
やると、入り口には白いひげと赤い服の男が立っていた。
 「サンタクロースだ!」一人の子供が叫んだ。子供達は喜びの声
をあげて赤い男に駆け寄った。男は子供達の頭を一人一人と撫でな
がら、背中に背負った袋の中の物を手渡した。
 赤い男がプレゼントを配っている中、入り口からは沢山の人々が
食べ物を持って入ってきた。教会の中には数多くのご馳走と共に明
るい雰囲気までもが入り込んだ。
 すべての支度を終え、プレゼントも渡し終えた赤い男は「クリス
マスおめでとう」と言い残し、教会を去った。牧師と彼らが後を追
うと、そこにはあの募金を断った初老の男が立っていた。
 「募金があの子たちのために行ったものならば、どうしてこんな
会合をもうける前に子供達のひもじさの事を考えなかったのだ?
私はあなた方の行動に偽りの信念を見たために募金を断ったのだ」
 彼らは男の言葉に自らの信仰の薄さを深く恥じた、という。






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