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第10回1000字小説バトル
Entry22

小さくなあれ

作者 : 君島恒星 [きみじまこうせい]
Website : http://www.hello.co.jp/~kimi3
文字数 : 794
 夜道に女性がひとりで歩いていた。
 僕は彼女を追って2メートルの位置まで近づくと、箱を開けて緑
色の玉をとりだした。
 不審に思った女性が振り向く。幼い瞳が興味をわかせた。
「僕の世界においで!」
 そう呪文の言葉をかけると、緑色の玉は一瞬光り、見る見る間に
彼女は10分の1に小さくなった。
 恐怖に歪む彼女の顔。
 いくら逃げようとしてもすぐに追い付く。僕はつぶさないように
彼女に近づき、やさしく手で掴むと、カバンの中の虫かごに入れた。
「少しの辛抱だよ」
 僕は自宅に向かった。
 3ヶ月前、両親が親戚たちとの旅行中に交通事故で亡くなった。
残ったのは保険金と、親戚の財産だった。その中にその屋敷があっ
た。古い洋館なのだが住心地がいい。迷わず僕はそこに住むことに
した。生活費には困らない。
 その洋館の地下室に金庫に入った謎の箱があった。その中には緑
色の玉が入っていた。
 世界創造の玉だという。
 好きなものを、そのまま小さくできるのだという。
 試しに野良猫に向かって玉をかざしながら
「僕の世界へおいで!」
 と言ってみる。
 猫はピンポン玉の大きさになった。
 これは本物だった。
 僕は小さな女を飼ってみようと思った。
 最初、女は泣き続けていた。なかなか言うことをきかない。その
うち、態度はでかくなってくる。
「あなたにわたしは犯せないわ。だって小さいんだもん」
 犯せなくても殺せる。僕は彼女を衝動的に殺してしまった。
「馬鹿だな。次を飼えばいいんだよ」
 次の日ふたりの女性を小さくして連れてきた。女たちを覗いてい
たら急に屋敷の屋根が無くなった。
 ポッカリ空いた空から、大きな顔が覗き込んだ。
「おお、こいつも女を飼い始めたぞ」
 僕も小さかったのだ。
 するとその上の屋根もなくなった。
 もっと大きな瞳がこっちを見ている。
「大きな世界を造ったな」
 そのとたん、その上の屋根もなくなった。その上も、またその上
も…僕は米粒よりも小さな存在だったのだ。






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