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第10回1000字小説バトル
Entry24

風呂場の死体

作者 : 穂積行人 [ほづみゆきと]
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文字数 : 約550
僕は湯をはった風呂に浸かりながら
取り止めもない想いをはせていた

とりあえず鼻まで沈んでみる
もし誰かが上方から見れば
湯から奇妙な半球が浮かんでいるように見えるんだろう
顔をしかめてみる
これで湯に浮かぶ“ドームとその眉間のしわ”だ

面白い

今度はそのまま窮屈に折っていた両足を
湯から出して風呂の壁に突っ張ってみる
これでもし湯の色が鮮やかな赤色だったらどうだろう
僕は風呂に沈められた死体になった
殺されてまだまもない死体
血で真っ赤に濁った湯
周りに飛び散った血がないから
風呂に入っているときに何かで刺されたのだろう
抵抗もしなかったらしい
相手の殺意を享受したわけだ

傷はどこにあるのだろうか
腹か首筋
多分動脈のあるところだ

もしも手首だったら自殺という事になる
おそらくかみそりか包丁は右手に固く握られたまま沈んでいるのだ

クリーム色で統一された壁が
毒々しい紫色だったら状況はまた変わる
この趣味の悪い湯の色は僕が好んで愛用している入浴剤の色だ
いつから壁は紫なのか
前に住んでいた者が(恐らく女だろう)塗りつぶしたのか
この風呂場が気に入って部屋を決めたのか
それともこの紫に目がつぶれる程
間取りが広いか、通学に便利だったのか
僕はその壁を塗り直そうとは思わなかったのか
湯を真っ赤に染めて芸術的な雰囲気に酔っているのか

体が暖まった
死体は湯から出て頭を洗いだした






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