第10回1000字小説バトル
Entry33
西暦二千二百三十六年 厳冬 過激派強盗集団レッド=エスケープ総勢三百二十八人は逃亡及び 組織の立て直しの準備を着々と進めていた。 組織は数々の悪行を重ね、被害者は全世界で二十億人にのぼる。 しかしながら、世界警察によって現在まで約二百五十人の団員を 検挙されていることもまた事実だった。これ以上の団員の犠牲は、 組織運営に大きく影響を与える。誰一人として警察の手に渡すこと は許されないのだ。今や彼らの悪名は世界中の隅々まで知れ渡って いたので、国外への逃亡は危険極まりなかった。組織は最先端の科 学技術をもって逃亡を企てた。時空を越えての逃亡、すなわちタイ ムマシーンによる現在からの脱出である。だが、窮鼠集団レッド= エスケープには逃亡に際していくつかの問題があった。 一つはタイムマシーンの性能にあった。二十三世紀の最先端の科 学技術をもってしても、タイムマシーンの開発はまだ初期段階で、 過去には行けるが未来には行けない、年代は選べるが日時を選ぶこ とができない、などの条件があった。タイムトラベルは、一年のう ちで時空に歪みが生じる、ある一日だけにのみ可能だった。 もう一つに財産の持ち運びがあった。組織結成以来四十二年間で 強奪した物品の重さは三百六十トンにもなり、とても一度には持ち 運べない。これは一人に一トンずつ分配し、各自足がつかないよう に逃亡先の時代で、ある方法によって処理するということになった。 さらに大きな問題として団員たちの年齢があった。レッド=エス ケープの平均年齢は七十二歳とかなり高齢であるため、団員一人に 対して従者2人を同伴させることになった。従者に選ばれたのは、 クローン技術によって大量生産された、寒さに強いある生物だった。 逃亡時における問題への対処法は次の通りである。 1 タイムトラベルの行き先は、各時代十二月二十四日に設定す ること。 2 処理する物品は、罪の意識がない子どもに配布すること。 3 各人の従者は、クローンのトナカイ二匹を同伴すること。 雪の深々と降りしきるクリスマスの前夜。過激派集団レッド=エ スケープの団員は、足音も立てずに子どもたちに忍び寄る。 二匹の従者が引くソリに乗って・・・。
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