第10回1000字小説バトル
Entry6
2000年12月24日深夜。 2001年正月の記念事業としてドミノ倒しの世界記録に挑戦し ようと、ボランティアを募りドミノを並べはじめて三ヶ月が過ぎよ うとしていた。わたしがこの事業の責任者として、計画から携わっ て約一年。予定より大幅に遅れていた計画も、徹夜続きの作業で何 とか間に合いそうである。ゴールは見えてきた。しかしクリスマス 返上で作業はつづく。 「いよいよ大詰めだな、少し仮眠でもとろうか」 そう思った瞬間、かすかな目眩を感じた。 「疲れが溜まってるな、早く横になろう」 だが、目眩はおさまりそうにはなかった。それどころか、ますます ひどくなっている。 「地震だ!! 」 部下が血相を変えて部屋に飛び込んできた。目眩ではなかった。別 段大袈裟に騒ぐほどではない軽い地震だが、ドミノに致命傷を与え るには十分であった。私はドミノ会場へと急いだ。 「今までの苦労は何だったんだ! ああ神様、どうかドミノ達が無 事でいてくれますように、せめて、2001年までに間に合います ように、2001、2001……2001個以上倒れませんように ! 」 表面では冷静さを装いながらも、すっかりと取り乱していた。息せ き切らして会場に辿り着くと、ドミノはなぜか一個も倒れてはいな かった。 「ああ、奇跡だ! クリスマスに奇跡が起こったんだ! 神様あり がとう! 」 「…という訳で、幾多の困難を乗り越えて2001年を迎えるにあ たり、このドミノ事業を…」 いよいよ、2001年を迎える。祝辞を聞きながらこの一年の苦労 が頭の中をよぎる。祝辞が終わりスタート地点に立つ。指が震える。 カウントダウンの大合唱が聞こえる。フラッシュが眩しい。 「5・4・3・2・1・ゼロ! 」 カタカタと音を立てて倒れるドミノ。沸き上がる歓声。しかしその 歓声はすぐに静寂へと変わった。 途中でドミノは倒れるのを止めてしまったのだ。 そのドミノはちょうど2001個目であった。
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