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第10回1000字小説バトル
Entry9

賭け

作者 : 綾部正斗 [あやべまさと]
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文字数 : 819
 駅の改札を抜けて外にでると、眩しいくらいの陽射しが、手荒い
歓迎をしてくれた。 
 昨日までの雨が嘘のように上がっていた。
「暑くなりそうだ」
 意味も無く、声に出す。照りつける陽射しが、半袖から覗く腕を
やく。
「それにしても……」
 デジタルの腕時計を見ると午後二時を指していた。「また、遅刻
か?」
 僕の待つ櫛沢千枝子は、時間――というか、私生活の全てにおい
てルーズだ。対して僕のほうは、A型という血液からもわかる様に
几帳面。
 今日は、店によってきたせいで、時間ぎりぎりだけれど、しっか
り間に合っている。
「今日くらい、時間通りに来てくれよ」
 祈りもむなしく、時間は、刻一刻と過ぎていく。
「あの、お嬢様は困ったもんだ」
 はじめてのデートの時が、不意に頭をよぎる。

 大学のコンパで知り合い、意を決して申し込んだデートを千枝子
は、あっさりとOKしてみせた。
 そして、当日。ガチガチに緊張していた僕を待っていたのは、悲
惨な結末だった。
 五時間待った。千枝子は、来なかった。
 振られたのかな。と、思っていた次の日。千枝子が、泣きながら、
「ごめんなさい。日にちを間違えたの」
 しかし、実際は、寝過ごしただけらしい。これは後日の本人談だ
が、曰く、僕は人を待つのを苦に思わないタイプだったので。だそ
うだ。
 それは、当たっていた。
 千枝子は、三年の付き合いの中で、一度も時間通りに来た事が無
い。
「今日は、少し懲らしめようか」
 ポケットの中で、窮屈そうにしているプレゼントの感触を確かめ
る。
「誰を懲らしめるのかなぁ?羽衣唯斗君」
 羽衣唯斗という、嘘みたいな本名の僕を呼ぶのは、千枝子だった。
 良家のお嬢様よろしく、白いワンピースと日傘を差している。似
合っている。ハッキリ言って、可愛くもあるが、完全に浮いていた。
「また、目立つ服着てきたな。一緒に歩くこっちの身にもなってく
れよ」
 いつもの僕の言葉に、「じゃ、帰りましょうか」
 と、いつもの言葉で返す。
「分かったよ。その前に、遅刻のばつとして、千枝子を泣かしてや
る」
「私が、泣くと思う」
「賭けようか?」
「いいわよ」
 僕は、ポケットからある物を取り出した。
「千枝子。結婚して欲しい」
「えっ……」
 千枝子は、一瞬押し黙り目に涙を溜めて、言う。「そんなのずる
いよ」
 どうやら、賭けは僕の勝ちみたいだ。






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