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第11回1000字小説バトル
Entry16

わな

作者 : 百内亜津治
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文字数 : 573
 ある寒い冬の午後。凍てつく太陽がこの暗い小さな建物の窓から
見えている。湿った空気に混じる臭気がやや不快だ。そう、ここは
公衆トイレなのだ。
 立って用を足していると、後ろで物音がする。だれか来たな。お
っ、ちょうど真横まで来てこっちを覗いているぞ。不謹慎な奴だ。
「あ、君ぃ、大きいねえ」
(無視)
「ちょっと君、もっとよく見せなさいよ、あらっ、こんにちわして
るわねえ」
(無視)
「あんた、一体何歳なのよお」
(無視)
「ねえ、ひょっとして、男性経験少ないんでしょう」
(無視)
「やっぱりだわ」

 あまり無視していたのが良くなかったのだろうか。あれ以来、こ
こに暮らして2ヶ月目になる。暮らしているというよりか、閉じ込
められている、監禁されているといったほうが正しい。ここは公衆
トイレなどではなく、奴らの罠として建てられた物だったのだ。毎
晩十数人の男たちがここへやって来る。そして…。

【ニュース速報】
○○県××市内の空地に建てられたバラック小屋から男性の死体が
見つかった。この建物をトイレだと勘違いしたトラックの運転手
(34)が警察に連絡した。死体は死後10日程経っていると見られ
る。死因は餓死。近所の人の目撃情報によると、毎晩この建物に多
数の男性が出入りしていた模様。同建物内には死んだ男性が書いた
と思われる手記が残っており、県警では男性の身元とあわせて調べ
ている。






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