第11回1000字小説バトル
Entry16
ある寒い冬の午後。凍てつく太陽がこの暗い小さな建物の窓から 見えている。湿った空気に混じる臭気がやや不快だ。そう、ここは 公衆トイレなのだ。 立って用を足していると、後ろで物音がする。だれか来たな。お っ、ちょうど真横まで来てこっちを覗いているぞ。不謹慎な奴だ。 「あ、君ぃ、大きいねえ」 (無視) 「ちょっと君、もっとよく見せなさいよ、あらっ、こんにちわして るわねえ」 (無視) 「あんた、一体何歳なのよお」 (無視) 「ねえ、ひょっとして、男性経験少ないんでしょう」 (無視) 「やっぱりだわ」 あまり無視していたのが良くなかったのだろうか。あれ以来、こ こに暮らして2ヶ月目になる。暮らしているというよりか、閉じ込 められている、監禁されているといったほうが正しい。ここは公衆 トイレなどではなく、奴らの罠として建てられた物だったのだ。毎 晩十数人の男たちがここへやって来る。そして…。 【ニュース速報】 ○○県××市内の空地に建てられたバラック小屋から男性の死体が 見つかった。この建物をトイレだと勘違いしたトラックの運転手 (34)が警察に連絡した。死体は死後10日程経っていると見られ る。死因は餓死。近所の人の目撃情報によると、毎晩この建物に多 数の男性が出入りしていた模様。同建物内には死んだ男性が書いた と思われる手記が残っており、県警では男性の身元とあわせて調べ ている。
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